淘汰の嵐が収まったあと必ず生き残っていたい−−日本航空(JAL)社長 西松 遙

-- 一方でリストラも残っている。舵取りは非常に難しいですね。

去年、部長級と55歳以上の地上職、計880名に早期退職してもらいました。ある関連会社など、役員が8人一気にいなくなった。わが社は団塊世代の人数が非常に多かったんです。経験豊富で、実務能力もあり、意識の高い人たちですが、そういう優秀な人が50人いれば済むところに250人いたわけだから、そうとうな重しだった。早くどこかで若い人たちにバトンタッチしなければいかんなと、ずっと思っていました。

第一線で仕事をする彼らの意識で会社を変えていってほしい。彼らが主体になって動けるように持っていきたいなと思いました。もちろんコストの面もありましたけれども。

そこで、昇進の順序を変えたんです。具体的に言うと、昔は本社の部長が終わってから支店長になり、戻ったら関連会社に出ていました。それを、部長になる前の次長クラスで支店長になり、頑張った人に本社の部長になってもらうようにした。

--今までは支店長というと、ベテランがどっしり構えていた。

海外に出ると、日本人会の会長に祭り上げられたりしてね。でも若手だと逆に小間使いにされて、動き回る。お客さんのニーズを直接聞くから、今度ここを変えようという動きにつながってくる。僕としては、そんなふうにちょっと刺激を与えて、ついに出番がきたんだぞ、お前ら頑張ってちょうだいね、と。

これにはもう一つ、プラスアルファがある。支店長は営業も見るし空港も見ます。整備やチェックインのスタッフなど非常に幅広く、ある意味、航空会社のエッセンスみたいな部分に直接触れることになるんですね。そうすると本社の部長になっても現場感覚を持って仕事ができる。

少しずつ変化は出始めましたよ。最近では、俺も知らないうちに、コンビニと組んで空弁なんか作ってた。これが評判いいんです。新しい発想ですね。機内食より、いいコンビニ弁当のほうがずっといいと。

そうすると、こんな展開ができる。羽田が国際化して、昼に国内線で使った飛行機を夜は国際線で飛ばすというときに、このコンビニ弁当を積み込める。国内線の台所では機内食は作れないんです。ところがコンビニ弁当なら常温で30時間もつから、積んでいけるわけです。そんな新しい時代にマッチした、いろいろなアイデアが出てきました。こうした一つひとつの工夫がお客様の評価につながるわけです。最近よくなったから、次も乗ってみようと。

--ですが先日、久々にストライキがありました。経営の先行きが見えてきて危機感が薄まってくると、リストラはやりにくくなりますね。

それはやりづらいですよ。でも、燃料費高騰という危機がある。世界の航空会社の数は合併や倒産で減ると思います。そうすると、供給過剰だった航空業界がある程度修復される。そこでしっかり対応して生き残れば、その後は割と落ち着くのではないか。その安定した状況になったときに生き残っている、というのが大事なんです。

そのためには、もっとお客様に支持されるようサービスを提供しなければいけない。われわれはプレミアム戦略と言っていますが、安全と定時とグッドサービスを、パーフェクトに、毎日繰り返し実行していくことが基本だと思っているんです。 

--格安航空のローコストキャリア(LCC)についてはどうですか。

LCCの意義はあると思っています。ただ、僕らみたいな航空会社がやってうまくいくかという問題がある。ちょうど伊勢丹が百円ショップをやるイメージですよ。伊勢丹のバイヤーに、百円ショップも頑張れと言っても、それは無理と思うんだ。僕らのような昔からの航空会社がやって成功したLCCはありません。

ただ一方で、もっと低コストでというニーズはありますから、国内線はJALエクスプレスとジェイエアという小型機会社で、国際線はJALウェイズで対応します。タイに客室乗務員の訓練基地を造り、今そこで大量に養成しています。ただクオリティは絶対下げたくない。ここで下げてもいいと思ってやると、本体がガタガタになりはしないかという恐怖があるんです。

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