淘汰の嵐が収まったあと必ず生き残っていたい−−日本航空(JAL)社長 西松 遙

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--安全、定時、グッドサービスが、すべての原点なわけですね。

これがもう原点です。アメリカでは最近、航空規制緩和は失敗だったという反省が出ています。徹底的に自由競争した結果、古い飛行機をぎりぎりで回して遅れ放題。乗り継ぎなんてほとんどできない。IRで向こうへ行くと、アナリストが突然消費者の顔になって、アメリカの航空会社はひどいと。カネを払うから飛んでくれ、というわけですよ。

ですから、僕はこれから多分、この三つの原点が絶対評価の対象になるはずだと思っているんです。

実はリストラでいちばん改善したのはこの部分です。みんな人件費だと思っているけど。安全性、定時性を必死で取り戻した。それで、お客様が日本航空もやるじゃないのと、戻ってきてくれているんです。

これからは、日本人だけでなく、いかに外国人客を取り込めるかがテーマになります。外国の人たちにも評価されるよう考えていかなければ。

--とはいえ、外国人客取り込みでは、韓国など他のアジア諸国からはそうとう出遅れています。

確かにそうです。先週当社の便で韓国に行きましたが、すべて日本語と英語ですよ。乗客の半分は韓国人なのに、韓国語は一言も出てこない。全然ダメですね。多言語化をしっかりやろうと思っています。

今までは乗客比率が日本人8対外国人2くらいでした。それが3、4年前に日台間で逆転して、去年、日韓がひっくり返った。韓国や中国はハブ&スポークで路線網を張るやり方で、日本は成田、羽田が別々。伊丹、関西も別々。だから、空港問題はちょっと難しいんですが、われわれとしては、機内食やアメニティなどで中国や韓国のお客さんに魅力的に感じてもらい、選んでもらえるような工夫が必要です。日本は少子化ですが、人口が多く、経済が急成長中のアジアの中にいることは、実は大変ラッキーなことです。

--ところで、就任時に大幅カットされた給料は戻ったんですか。

役員報酬60%カットにまで戻りました。あのときは貯金を400万円下ろしたんですよ。ちょうどエアコンが壊れるし、車検で何十万も取られるし、揚げ句は風呂場の湯沸かし器まで壊れそうになって、女房が、どうするんですかっ、と(笑)。

通勤も電車が多いです。何十年とこれできているから、こっちのほうが合うんです。家を出てあの坂を登って、あの階段昇ってと。単にリズムの問題と運動不足解消です。消費者の目線に立って、とか、全然そんなまじめな理由じゃないですよ。


(山崎豪敏、冨岡 耕 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

にしまつ・はるか
1948年静岡県生まれ。72年東京大学経済学部卒業後、日本航空入社。フランクフルト支店勤務、資金部長等を経て、05年取締役、06年代表取締役専務、同年社長就任。

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