色気で稼ぐ「生中継アイドル」を量産する現場 上海のアイドルマネジメント会社を直撃

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白い扉が約2メートルおきに並ぶ、汪剣鳴が立ち上げたマネジメント会社「上海玖睦文化伝播有限会社」の内部
中国ではパソコンやスマートフォンからネット回線を使って手軽にできるインターネット生中継が大流行している。多くの素人が歌や踊りを披露するパフォーマーとなり、ブレークすれば中国語でネットアイドルを意味する「網紅(ワンホン)」と呼ばれる。2016年は、この「網紅」を大量に生み「ネット生中継元年」と称された。そのきらめく世界の「実態」と「儲けの仕組み」を5日連続でリポートする。第3回はネットアイドルのマネジメント会社を直撃する。
=敬称略=

 

本連載は5月15~19日まで5日連続で5本の記事を掲載します

歩道に面した入り口から狭い階段を2階に上がると、くすんだ外観からは想像もつかない真新しいガラス扉が現れる。このガラス扉の先に広がる赤と白を基調にしたオフィスが、毛毛が所属する「上海玖睦文化伝播有限会社」である。

オフィスの中には映像編集のための専門ブースを1つ備えた制作部門や、写真撮影ができるスタジオもある。そこまではCMや映像の制作会社にはよくある光景だが、特徴的なのはオフィスの中心部を占める廊下に白い扉が約2メートルおきに並んでいて、それぞれが小部屋になっている点だ。扉の上には電球が1つついており、それが灯っていれば個室が使われている合図だ。所属するネット生中継のパフォーマーには、この小部屋が1つずつ与えられている。これが中継部屋、いわば彼らの仕事場である。毛毛がいたのもその1つだった。

「爆発的な増長期の段階」

汪剣鳴氏はパフォーマーのマネジメント会社「上海玖睦文化伝播有限会社」の最高経営責任者(CEO)。会社にてインタビューした

この会社を立ち上げた汪剣鳴CEO(35歳)は、ネット生中継の現状を「爆発的な増長期の段階にある」と表現する。自ら持ち出した40万元(約640万円)と投資家から集めた資金、合わせて440万元(約7040万円)で、友人と3人で会社を始めたのが昨年7月。取材時には立ち上げから4カ月だったが、すでに黒字が出始めたと話していたから、その「爆発的な増長期」の勢いにうまく乗ったといえるだろう。会社には毛毛を含む12人のネット生中継のパフォーマーを専属させているという。 

「パフォーマー間の競争は非常に激しいですよ。100人が生中継をして2カ月経ったら1人しか残っていないのが現状です。有名とされるパフォーマーは1万人に1人です。なぜなら、たとえば伝統的なモデルなどの業界と違って、生中継ではリアルな自分を何時間も見せなくてはいけません。さらに随時、視聴者の反応を見る必要もあります」

次ページ最初の6秒で勝負が決まる
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