色気で稼ぐ「生中継アイドル」を量産する現場 上海のアイドルマネジメント会社を直撃

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毛毛は、重慶出身。上海に来たのは大学に入った時だった。毛毛は、文科系ではなかなか誉れの高い、上海対外経貿大学の新聞学科に通う4年生である。親元を離れて暮らす毛毛にとって、ネット生中継で得られる収入は大きな魅力だと語る。

「いい生活をしたいと思っても、私の実家はそんなに豊かではないですから、自分を頼るしかありません。他の人が持っているモノを私も欲しかったら、自分でおカネを稼ぐしかありません」 

インタビューに応じる毛毛

ネット生中継の仕事は、楽にカネを稼いでいるよう見える。毛毛も自分が始める前は、パフォーマーはカメラの前でおしゃべりをして踊っているだけだと思っていた。だが、実際は違った。カメラの前に立てば、どんなに気分が乗らなくても落ち込んだ気分を見せるわけにもいかず、視聴者との交流にも感情移入しなくてはいけない。学ばなければならないことも多く「難しいしきつい仕事」で「本当に疲れます」と話す。

ノルマも深夜労働も

パフォーマーは、プラットフォームから月60時間以上の生中継をしなくてはいけないなどとノルマを課される場合がある。それをこなせれば、視聴者から贈られるプレゼント以外に、プラットフォームから基本給が保証される仕組みだ。プラットフォームにしてみれば、基本給を払う代わりにコンテンツを安定確保できるメリットがあるという。

加えて視聴者が多いのは圧倒的に夜。その結果、生中継は、ほぼ毎日明け方まで続き、帰宅は午前様。睡眠時間は削られ、生活は不規則になる。確かに肉体的にもハードだ。

「どれだけおカネを稼げるかは、どれだけ自分を捧げたかに比例します」と語る毛毛だが、まだネット生中継を始めたばかりの彼女は、どれほどの収入を手にすることができるか自分でもわかっていない。

「1、2カ月頑張ってみて月1万元(約16万円)以上いけばいいと思います。私を好きなファンが多ければいけるでしょうけど、嫌いな人が多ければ、無理ですよね」

ネット生中継では次々と若くてかわいい新人パフォーマーが現れる。今は毛毛もその1人といえるが、彼女自身、この稼業も若いうちはいいが、そう長くは続けられないだろうと考えている。その刹那的ともいえる世界に身を投じた毛毛は、自分の将来をどう思い描いているのだろうか。

「上海に来た頃は、キャリアウーマンになりたかったです。雑誌の編集など、敏腕で独立した感じの女性が好きなのです。新聞学科ですからメディア関係の仕事をしたいです。ネット生中継を始めたこともそれとまったく関係ないわけではありません。すでにメディア業界に入れましたので、将来はこの業界で仕事をしていきたいです」

宮崎 紀秀 ジャーナリスト

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みやざき のりひで / Norihide Miyazaki

日本テレビ報道局、社会部警視庁担当記者、外報部デスク、中国総局長などを経て現在はジャーナリストとして北京在住。主に「バンキシャ!」「ミヤネ屋」「ウェークアップ!ぷらす」など日本テレビ系列で放送する報道番組にコンテンツを提供。中国がらみのルポを得意とする。

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