「離婚しても子に会いたい親」が抱える焦燥 わが子を「連れ去られた」側が感じていること

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「そんなある日、これからの生活をどうするかの話し合いが原因で夫婦げんかをしました。夫はその途中で幼い子どもたちを抱きかかえ、近くに住んでいた両親の所へ帰ってしまいました。それまで毎日同じ布団で寝て母と子の絆をしっかり築いていたのに、いきなり会えなくなったんです。幼い子どもたちは、ママに会いたいと泣き叫んでいたはずです。

その後、子どもたちとの暮らしを取り戻すために私は法廷で戦いました。親権や監護権(子どもの世話をする権利)を求めて、調停、そして裁判と何年もの時間とたくさんのおカネを使いましたが、子どもたちとの絆を取り戻すことはできませんでした。あれから5年近く経ちましたが、当時の子どもたちの気持ちを思うと胸が締めつけられる思いがします」

ある日、突然、奥さんが子どもを連れて出て行ったり、奥さんに家から追い出されたり、逆に、夫が子どもを連れて出たり、夫が奥さんを追い出したり……。片方の親が突然、わが子に会えなくなるということが日本全国で頻発している。

このようにして突然、子どもと会えなくなった親は、大抵すさまじいショックにさいなまれる。体重を極端に落としたり、逆に過食になって不自然な太り方をしたり、酒におぼれてしまったり、さらには絶望のあまり命を落としてしまう人すらいる。

私は今までに50人、またはそれ以上の当事者から話を聞いてきた。見るからに暴力的だったり威圧的だったりする人は特にいなかった。一方で、突然訪れた家族との別れに強いトラウマを抱き、別れて暮らしている子どもたちへの強い愛情を持ち続けている人はたくさんいたし、はっきり言えばそういう人ばかりだった。子どもたちと定期的に、できるかぎり頻繁に会いたいと思っている人はもちろん、できることならまた一緒に暮らしたいという気持ちを抱いている人が大半であった。

そうした子煩悩な親たちだからゆえに、同居する親が子どもを奪われるのではないかという不安を抱き、その結果、遠ざけられてしまうのだ。

家族のかたちが変化している

このように当事者が、別れた子どものことをあきらめず、会いたいと願い、自らの体験をカミングアウトするというのは、いかにも現代的な現象なのかもしれない。というのも、家族観の変化の兆候が統計から感じ取れるのだ。

日本全国の離婚件数は、過去最高だった2001年が28万9836件だったのに対し、2016年には21万7000件と7万件も減少している(厚生労働省調査「人口動態統計の年間推計」より)。その一方、面会交流調停(別居する親が子どもとの面会を求めて裁判所立ち会いの下、話し合い合意を目指すこと)の申請数は2002年度が4203件だったのに対し、2014年度には1万1312件と約2.7倍に急増している(最高裁判所の司法統計より)。

離婚しても子どもに会いたがる親が多くなったという統計結果は、“親の別れ=子どもとの別れ”というそれまでの考えではなく、“別れても親子という関係は不変”と考える人が確実に増えていることだといえよう。

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