「離婚しても子に会いたい親」が抱える焦燥 わが子を「連れ去られた」側が感じていること
そうした国民の家族観の変化を後押しするように、家族に関する法律も改正が行われている。諸外国のような離婚後の共同親権こそ認められていないが、2012年には民法の766条が改正され、面会交流と養育費という概念が、法律上で明文化されたり、2014年にはハーグ条約(子どもを元の居住国に返還するための手続や国境を越えた親子の面会交流の実現のための締約国間の協力等について定めた条約、外務省ホームページより)が日本でも発効されたりしている。
一方で、子どもと同居している側の親の気持ちはどうなのか。
面会交流コンサルタントでシングルマザーでもある、しばはし聡子さんに話を伺った。彼女の場合、夫側が家を出たので、いわゆる“連れ去り”ではない。
「Xデーを決めて子どもを連れて家を出るまでには、結婚生活中にそうとうなつらい思いをしてきたはずです。生活環境を一変させてでもわざわざ出るのですから。きっかけは人それぞれですね。浮気や暴力のような決定的な理由ではなくて、お皿を洗ってくれなかったことが最後の一押しになる場合だってあるんです」
「子どもを連れ去る親」の事情
連れて出ていく親の気持ちはどうだろうか。
「“今までの結婚生活で、ずっとつらい思いをさせてきたことに気づいてほしい。どうして出て行ったのか頭を冷やして考えてほしい。あなたも困って苦しめばいい”――そんな思いの人もいるのではないでしょうか。
連れて出た直後はストライキのつもりで、離婚までは考えていなかったのかもしれません。ところが相手が怒って迫ってきたり、弁護士をつけて理詰めでこられたりしたら、太刀打ちできませんから、直接話し合うことを拒絶して弁護士に一任したり、または恐怖感から警察に通報したりといったこともあるのではないでしょうか。
子どもと引き離された側の親にとっては、あまりに突然の出来事で愕然とすることかと思いますが、そこで大事なのは初動をくれぐれも気をつけることです。怒りをもって追いかけるのと、“つらい思いをさせて申し訳なかった”と思いながら追いかけるのでは、今後の相手との関係性が大きく違ってきます。
引き離された側の親の中には“私は何も悪いことをしていないのに勝手に出て行った”“子どもを連れ去るのは海外では誘拐だ”“相手は弁護士に入れ知恵されてしまった”など、いろいろな理由で相手側を非難し、自分の非に向き合わなかったり、出て行った理由を振り返ろうとしなかったりする人がいらっしゃいます。引き離された親はXデーからつらい日々が始まりますが、出て行った側はこれまでの結婚生活の何年間もずっとつらかったのです。その時間差や温度差を認識することが必要です」
彼女の話は確かに一理あるのだろう。憤りや焦りから理論武装してつい争いモードになってしまいがちだが、相手が望んでいることは心に寄り添うことではないだろうか。そして初動で心に寄り添ったというような当事者のほうが、面会交流を頻繁に実施している傾向が確かにあったりするのだ。
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