「なんでふさることかし侍らむ」というかぐや姫の問いには、現代にも通じる問題意識が感じられる。姫が結婚をしないのは人間界に属していないからだと解釈されることが多いが、それだけが原因なのだろうか。逆に、「結婚を否定できる立場」にするために、作者がわざわざ姫を「月から来た人」に仕立てたということも考えられるのではないか、と思う。
浮気されちゃうし、あとで後悔するぐらいだったら、結婚するもんか!と時代の常識に逆らってかたくなに反対するかぐや姫の姿勢をみると、「ブラジャーよおさらば」というスローガンのもと、デモに出ていたウーマンリブの立役者の姿が思い浮かぶ。作者不詳がフェミニストで、女性の味方だったかどうかはさておき、彼には結婚を否定するれっきとした別の理由があったのではないか。
最初から勝ち目のない戦いに挑む貴公子たち
平安時代においては、女御たちが内閣の会議に参加することはなかったが、男性の出世は女性との「恋愛」によるところが大きかった。誰と結ばれて結婚するか、あるいは、誰と離縁するかによって、抜擢人事の対象になったり、逆に立場が危うくなったりすることは日常で、良い結婚は権力を手に入れる王道手段だったのである。
が、姫が結婚できないという設定になっている以上、求婚者がどう頑張っても彼女がもたらすであろう権力と莫大なおカネを手に入れることは、誰であろうとできない。
つまり最初から勝ち目のない戦いに貴公子たちは挑まされるのだが、それぞれの冒険と破滅する過程はとても詳細につづられている。作者不詳は何らかの理由で当時の権力者に反感を抱いていたのだろうが、手に入れることのできない目標に向かって空回りする彼らの姿をここまで詳細につづる背景には、作者不詳の時の権力者たちに対する深い恨みがあると言われている。
はたして作者不詳のドSっぷりは、貴公子たちが超難題に挑む場面でクライマックスを迎える。
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