物知りのおじいさんに言われたとおり、回っている燕を見かけ、急いで籠を引っ張ってもらうのだが、何かをつかんだと思ったら落ちてしまう。気絶後、やっと目が覚めたら……。
ほかの挑戦者と比べて近い場所で手に入れることができる、最も地味な品を頼まれたにもかかわらず、かわいそうな中納言石上麻呂足は成功するどころか転落し、大恥をかく。そのあとすっかり元気をなくし、なんと命まで落としてしまう。かぐや姫のせいでついに死者が出てしまったのである。
そしていよいよかぐや姫がすべてを捨てて、遠いところへ旅立つ日がやってくる。この世の記憶をすべて失った姫は、結局最後まで「愛」というものを知ることなく、地球を去っていく。
これは愛の物語なんかじゃない
かぐや姫は近づく男性に難題を出して破滅に追い込む、冷酷な女だ。そして彼女の周りに群がる男たちは権力や財力はもっているものの、ウソつきだったり、詐欺師だったりする。非情な女の目を通して、人間の欠点や汚点が一つひとつ暴露されていくわけだが、彼らの「敗北」こそ権力に反発しようとしていた不詳の作者が最も望んできたことなのだろう。
この物語には恋や愛なんてちっともない。あるのは、欲望と傲慢さ、そしてウソだけだ。日本では、いまだに愛の物語やSFとして取り上げられがちだが、作者不詳が徹底的なまでに権力者を苦しめるこの話は、当時からユーモアの効いた風刺小説として読まれていたと言われる。
恋に命を懸ける昔の貴族を見習ってほしいと思い、草食化がどんどん進んでいる日本男子に『竹取物語』を推奨してしまったのがかなりの誤算だった。これだから私にモテ期が訪れないのかもしれない……。
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