このような研修制度は、2004年度からの臨床研修の指針変更によるものですが、若いうちに多くの診療科を回ることで、ジェネラリスト(なんでもひととおり診られる医師)を育てようという厚労省の方針でした。多くの診療科で研修を行い、それを今後の経験にするという意味ではよい制度だと思いますが、選択の機会を多く与えられることにより、多くの医師が自分が進むべき将来の科目に迷ってしまう、という現象も起きてしまったのです。
3働き方や働く場所が多様化している
世間一般でも、正社員以外に契約社員や派遣社員、アルバイトやパート、フリーターなど、働く側の事情(雇う側の事情を含めて)により、さまざまな働き方ができるようになってきましたが、それが医師にも適用されています。特に女性医師が増えたことにより、結婚・出産などのライフイベントに応じて働き方を変えなければならないという問題が出てきています。以前であれば女性医師がマイノリティであり、男性医師の価値観においてそのキャリア選択というものは限定的だったのものが、最近は医師自身の希望がある程度、通るようになってきました。
また、これは男性医師も同様ですが、ネットの普及により、求人情報が瞬時に手に入るようになりました。常勤勤務、アルバイト勤務、スポット勤務など、自分の希望の勤務形態に合わせて働く場所が選べるようになってきたわけです。しなしながら、それを選ぶ軸が医師自身になかったりします。つまり自分は給与が重要なのか、仕事のやりがいで選ぶのか、それとも家庭とのバランスを考えて動くのか?
私は初めてお会いし、転職の相談を受ける際、「何を基準軸に転職先を選びますか? その優先順位を教えてください?」と必ず質問をしますが、回答については、非常にあいまいな医師が多いのです。
「年収は当然高いほうがいい」
「自宅から1時間以内で通えるところがいい」
「病院の雰囲気がいいところがよい」……
希望が多いのはもちろん構わないのですが、
「その中でいちばん何を重視されますか?」とお伺いすると答えられない。
情報があふれ、いろいろな働き方の選択肢が広がる中、その中で転職先や勤務形態を決めるのも一苦労という先生が多くいらっしゃるのです。
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