日本の女子高生は未来技術を先取りしていた

英エコノミスト誌が「2050年の技術」を予測

来るべきもののヒントを得るために目を向けるべき3つめの場所は、本やテレビ番組、映画などのサイエンスフィクション(SF)に描かれた、想像上の未来だ。SFは興味深い発想から出発し、論理的な結末へと発展させていく。汎用ロボットや宇宙エレベーターを創ることができたらどうだろう。ナノテクノロジーやバイオテクノロジーが制御不能になったら、あるいは個人の遺伝子組み換えがタトゥーのように一般化したら何が起こるのか。

このような未来を描く物語は、ユビキタス(遍在的)なAIや寿命を延ばす若返り手術、そして火星などの太陽系の惑星の植民地化が実現したとき、あるいは人類の細分化が起こりポスト人類ともいうべき新たな種が登場したとき、世界はどうなるかというビジョンを示している。これは、長期的に出現しうるさまざまな結果を俯瞰(ふかん)するのに便利な手段とも言える。大物ハイテク起業家のイーロン・マスクの表現を借りれば「未来という枝分かれしていく可能性の流れ」の全体像をとらえるのに役立つのだ。

一見未来を描いているSF作品

『2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします) 

ただ、SFは単に未来を予測するだけではない。技術者が新しいものを生み出すためのひらめきも与える。たいていの技術者はひと皮むけばSFファンだ。1990年代のフリップ開閉式の携帯電話などは、1960年代のテレビ番組「スタートレック」に登場する携帯通信機に触発されたように見える。また、コンピュータと直接会話するというのも「スタートレック」に登場していたアイデアだが、このところ新たな潮流としてアマゾンの「アマゾン・エコー」をはじめ、音声を基本的なインターフェースとする、常時オンの手ぶらで使えるコンピュータ端末が登場している。

何世代ものコンピュータ科学者が、子供時代にアイザック・アシモフのロボット小説を愛読していた。イーロン・マスクをはじめ、今をときめく起業家のなかにも、「カルチャー」と呼ばれる高度な宇宙文明が登場するイアン・M・バンクスのSF小説に刺激を受けたと語る者は多い。「スタートレック」と同じようにバンクスの小説には人間とAIが共存する、欠乏とは無縁の文明が描かれている。ただ、多くのSF作品は一見未来を描いているようで実際には現在を描いており、コンピュータへの過度の依存、あるいは環境破壊といった、今日的なアイデアや懸念と向き合っている。幅広いSF作品に触れることで、より柔軟に未来の技術的あるいは社会的シナリオを描けるようになる。

とはいえSFはテクノロジーの進歩に対する見方や議論を形づくり、はからずもそれを制約することもある。たとえばSF世界のロボットと現実世界のそれとはまるで違う。SF世界のロボットをまねようとすると、ロボット工学は誤った方向に進みかねない。だから20世紀半ばのSFの古典を読み、そこにどのような未来の読み違いがあり、それはなぜかを考えることには意味がある。それを基に今日のSFにどのような誤った前提があるかを自らに問いかけるのだ。

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