日本の女子高生は未来技術を先取りしていた 英エコノミスト誌が「2050年の技術」を予測

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もちろん、そのような類推は完璧とは言えないし、歴史がそのとおりに再現することもない。だが完全ではなくとも、比較は有益な情報をもたらしてくれる。テクノロジーの歴史に目を凝らすと、長短さまざまな間隔で繰り返し登場するパターンが数多く見られるのだ。

新たな発明は、プライバシー侵害の懸念を巻き起こすことが多い。1880年代には初代のコダックカメラが「どこで撮影されているかわからない」というパニックを引き起こした。2013年のグーグルグラスとまさに同じ状況だ。

コダックのカメラは若者のモラル低下を招くと批判されたが、それは1790年代の小説、1910年代の映画、1950年代のマンガ、1990年代のビデオゲームに向けられた批判と同じだった。また、19世紀のラッダイト運動から、ロボットは大量失業を引き起こすと説く現代の予言者たちまで、新たな機械が人間の雇用を奪うというおそれは何世紀も前から存在する。

核兵器や遺伝子組み換えから人工知能(AI)まで、人間に神のまね事をさせる新たなテクノロジーにまつわる懸念も同様である。いずれも人間に火という力を授けてよいのかと問いかけるプロメテウス神話の焼き直しだ。そうした懸念が的を射たものであったか否かにかかわらず、未来学者、起業家、発明家にとって過去のテクノロジーへの反応を理解することは、新たな製品がどのように受け入れられるかを予想する貴重な手掛かりとなる。

突然登場するように見えても

歴史の話はここまで。未来を予見するために目を向けるべきものの2つめは、現在である。SF作家のウィリアム・ギブスンの有名な言葉に「未来はすでにここにある。均等に行きわたっていないだけだ」というものがある。テクノロジーの懐胎期間は驚くほど長い。突然登場するように見えて、実はそうではないのだ。

だから、正しい場所に目を向ければ、明日のテクノロジーを今日見ることができる。新たなトレンドを理解しようとするジャーナリストや、企業のお抱え人類学者はこの方法を採る。それは「エッジケース(限界的事例)」、すなわち広く普及する前に、特定の集団や国だけで広がりつつある事例を探すことにほかならない。わかりやすい例が21世紀初頭の日本におけるガラケーだ。

2001年の日本ではカメラ付き、カラーディスプレイ付きの携帯端末が当たり前に普及していた。道案内付きの地図を表示でき、電子書籍、ゲームなどのアプリもダウンロードできた。ジャーナリストやアナリストはそんな電話を見るために日本詣でにいそしんだ。欧米の技術系カンファレンスで日本人が懐から携帯端末を取り出すと、それは時空の切れ目から落ちてきた貴重な未来のかけらのように丁重に扱われた。

日本が他国に先駆けて未来に到達したのは、通信業界が孤立した独占的性質をもち、また国内市場に十分な規模があったためである。これによって、日本のハイテク企業は他国のシステムとの互換性など気にせずに、創意工夫することができたのだ。

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