それでは、もはや先ほど述べたような第1のパターン、すなわち『秋まで下がり続ける流れ』になるのかといえば、そうとも言い切れないのです。今、日本株を売っているのは明らかに私たち日本人です。個人は来年度(2014年度)から各種税制が変更となり、税率がアップするのを控え、一貫して売却に転じています。そしてわが国の機関投資家たちも国債による損失が生じている場合や、公的ファンドの場合ならリバランスをする必要がある際に、容赦なく日本株を売り、利益を確定する動きに出ています。
主役は、依然として『外国人』
しかし、いわゆる『外国人』は違うのです。開示されているデータを見るかぎり、地域別に欧州から北米へと“選手”こそ変わりましたが、彼ら『外国人』は一貫して日本株を、しかも現物で買い続けています。つまり主役は今や日本人ではなく、外国人になってしまったというわけなのです。そのため、国内におけるデータ分析やアノマリーなどだけから判断するのは、たいへん難しい状況に突入しているというわけなのです」
私の研究所はグローバルマクロ(国際的な資金循環)に対する分析を通じて、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢の“今”と“これから”を考えることを役割として担っている。そのような中で、この市場データ分析の「猛者」との出会いがあり、日々緊密なコラボレーションをアライアンスとして展開するようになった経緯がある。その一つの成果の一端を示すため、このたび『インテリジェンスのプロが書いた日本経済復活のシナリオ――「金融立国」という選択肢』(中経出版)を上梓した。
その中でも書いたが、わが国を代表する機関投資家たちに対して、投資のための日々の糧というべきデータを提供している「猛者」と、国内外の公開情報を分析し、地政学的リスクまで織り込みつつ、「外国人たちがどのようにわが国のマーケット、そして政治・経済を見ているのか」を提示する、私の研究所は実に相性がよい。なぜならば1998年に外為法が改正となり、世界中のマーケットを縦横無尽に駆け巡るヘッジファンドや投資銀行たち(以下「越境する投資主体」と記す)が、わが国のマーケットにおいてもわが物顔で動き始めて久しい中、その「頭の中」を探るには、われわれの行っている2つの方向性からのアプローチを重ね合わせるのがいちばん有効だからだ。
もっと具体的に言うと、こういうことだ。――「越境する投資主体」がわが国マーケットに対して猛爆撃にも似た集中投資を行う場合、それは極めて精緻な数値計算に基づいている。なぜならば「越境する投資主体」たち自身が自前のマネーを投資することは基本的にはないのであって、誰かから借りたものをわが国への投資に振り向けるのが一般的だからだ。
そうである以上、「越境する投資主体」たちはこうした真の投資家たちに対する説明責任を負う。そのために手っ取り早い方法が数字を羅列する方法なのである。したがってまずひとつには、ここで「猛者」が日々行っている数値計算により、彼ら「越境する投資主体」が何を考えているのかが理解できるというわけなのだ。
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