ドラマ「ドクターX」はなぜウケたのか
2012年の春、「まだまだ珍しいフリーランス医師の実情」ということでドラマ制作会社より取材を受けた。「先生のお話ってわかりやすい。」脚本家の中園ミホさんに言われて私はハッとした。私は家族内に医師がおらず、夫も非医療業界人であり、自分の仕事を理解してもらうためには、日々それなりの努力をして自分の業務を説明する必要があり、それがしらずしらずの内に「わかりやすい説明」のトレーニングになっていたのだ。また「有力医師を父や夫に持った女医に比べ、私は何かとソンをしている。」とばかり私は長年思い込んでいた。それと同時に、一般的医師に比べて非医療業界人との交流が多く、「病院の問題点を他業界と比較検討する」「それをわかりやすい言葉で世間へ伝える」という点ではアドバンテージになる、と悟った瞬間であった。
「長年勤めているというだけの無能爺が年功序列で出世し、いろいろな既得権を握ってしまい、その組織に属するかぎり若手はその下働きをするしかなく、組織全体に閉塞感をもたらしている。」「ワーキングプア勤務医の敵は開業医ではない。勤務医組織内のノンワーキング中高年勤務医」「無能な開業医は淘汰されるけど、なまじ大学病院や公立病院に就職した無能医は淘汰されないのが問題」のような病態は、実は大学病院以外のほうが深刻なのかもしれない…と私は考えはじめ、それは本連載を開始する動機ともなった。
このドラマは単なる病院ドラマではなく、「日本的年功序列組織のもたらす閉塞感」という、日本のあちこちで目撃される問題をドラマ化したものである。それゆえに「卓越した腕を持ち、閉塞感に風穴をあけるフリーランス医の活躍」が多くの視聴者に共感や爽快感を与え、「2012年、民放ドラマ最高視聴率」という結果につながったと考えている。
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