「カワイイ」博多弁の用法が意外に難しいワケ 「行く」と「来る」が逆?思わぬトラブルも…
柔らかく、優しいイメージの博多弁。大阪弁と比較して、女性が使えば「カワイイ」などとテレビ番組で紹介されることもある。
ただ、意味を取り違えると、ひどい目に遭う。
「でしょ」と「直す」。福岡市出身の斉藤寛さん(51)は、この2つの言葉に「苦い思い出がある」。仕事は、三好不動産の経営企画課長。福岡の歴史や習慣を解説する「福博講座」の講師も務める“福岡通”だ。
東京には、大学進学や就職、転勤で通算16年間住んだ。このうち、学生時代のホテルでのアルバイトでつまずいた。
「テーブルはここでいいんでしょ……」
「料理はこれでいいんでしょ……」
先輩のバイト生に指示を仰いでいた時だった。
「テメー、何さっきからため口たたいてんだよっ」。突然、先輩から怒鳴られ、胸ぐらをつかまれたという。
丁寧語のつもりだったが、関東出身の先輩は同級生に使う「タメ口」と受け止めたようだ。
ホテルの社員に「このテーブルを直せ」と指示された時もそうだ。
テーブルの脚をたたんで片付けていると、「おまえ、何やってんだよっ」とまた怒声が。福岡では「片付ける」の意味で語られることが多い「直す」は本来、「修理する」の意味。社員は「並べ直せ」の意味で使っていた。
客を迎える前の慌ただしいホテルの現場で、テーブルをどんどん片付ける。そんな「真逆」の行動を、博多弁が生んでいた。
福岡人と分かる決定的な一言
「今から来るけん」(行きます)も、「真逆」のリスクをはらむ。自分が相手方へ行くのに、なぜか、「来る」と言ってしまう。ビジネスの現場では行き違いは避けたい。
まったく意味が通じない言葉もある。
「離合停車。しばらくお待ちください……」
西鉄電車で全線単線の貝塚線(福岡市―福岡県新宮町、11キロ)では、上下線が行き違うとき、駅で待つ電車内ではこんなアナウンスが流れる。
車と車がすれ違う意味の「離合(りごう)」は、福岡など九州の方言とされる。