ミナミの「キャベツプラザ育」は何が凄いのか 大阪の編集者がまとめた異色のグルメガイド

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祭りっ子は街の中で、うまいものを飲み食いして育ってきたということなのだろう。と、我ながらざっくりつなげていくが、食、その周りの人、街、道具、と興味の範囲は広がっていったのか、『dancyu』『料理通信』『あまから手帖』など連載も多く、「大阪」「街場」「飲み食い」となると必ずお名前が挙がる方である。

そんな江さんが今までに雑誌で書きとめた、飲み食い日記(と勝手に称する)をまとめたのが本書『いっとかなあかん店 大阪』だ。

全体の構成は、50店舗ほどを「キタ(梅田・北新地・堂島・中之島・福島・天満)」「船場(北浜・肥後橋・靱公園・本町・内本町・南船場)」「ミナミ(鰻谷・心斎橋・道頓堀・難波・千日前・黒門市場)」「その他」に分けて丹念に紹介し、「絶対に再現不可能なBarの話」「うまい鮨、とはなんだろう」「ザ・大阪のうまいもん実況中継(焼肉、てっちり、串カツ、うどんすき、お好み焼き)」「なぜ、焼肉といえば大阪なのか?」の各項目で、うまそうなものやら店やら人を、数で言えば総勢61店舗におよんで、ひたすら語っていく。

過ごしてきた体験で語られていく店たち

61店舗に関する江さんの紹介の仕方は、店を情報として扱う、グルメ雑誌のそれとは違う。実際に自分が店に通い、話し、仲間と出会い、時間を過ごしてきた体験で語られていくのだ。それは「おいしい街、うまい通り」なる6つのコラムで補完されており、イラストの助けも得て、読者が食べ歩く際の導線にもなっていく。

そして今、私は「ミナミ」で、大阪飲み食い旅の導線を私なりに描いている。大阪の町ごとの性格は、秀吉の大阪城築城や江戸時代の、碁盤の目状の町割りで決まったそうだ。なんば界隈の「ミナミ」は、「同じミナミでも南部の難波千日前あたりと一番北にあたる鰻谷とでは、街としての手触りがまったく違う」という。

私の妄想旅の導線の中心は、お好み焼きの『キャベツプラザ育』だが、この店についてなんぞ、お好み焼きの前に店の立地の話がある。位置は「ミナミ」のど真ん中、旧町名は「畳屋町」、今の住居表示は東心斎橋1丁目――まず大阪のなかでの位置づけ、そこから入るのだ。

『キャベツプラザ育』のお好み焼き(右)と『布施風月』の「風月玉」(書籍著者撮影)
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