ミナミの「キャベツプラザ育」は何が凄いのか 大阪の編集者がまとめた異色のグルメガイド
ちなみに『キャベツプラ育』は、ど真ん中の歓楽街のまたど真ん中にあり、高級クラブやラウンジが犇めくバブル期の開店だったそうで、不動産業者が場所探しに大活躍。その上開店後に営業時間のアドバイスまでしたというからおもしろい。お好み焼きと関係ないといえばないのだが、細い路地にあるお店の立地がミソなのだろう。そんな人間関係やら地縁を知って来店すると、味も違ってくるというもの。
そもそも「キャベツプラザ」なる名前からして、店の意気込みがひしひしと既に伝わってきている。私は次回の来阪時には、ここにまず行きたい。
とはいえ、東京もんや、大阪以外の人は、新大阪駅や大阪駅を利用することが多いので、梅田から始めるほうがいいかもしれない。本書でいうなら、「キタ」の「新梅田食堂街」から。JR大阪駅や阪急梅田駅の高架下なので、出張の帰りはここにちゃっと立ち寄って新幹線乗車、ってなことで出張を幸せに締めくくりたい。
そうそう、東京もんの私でも行ったことのある店が出ていた。「バー・ヘミングウェイ」だ。
だいぶ前になるが、出張で何度か先輩に連れて行ってもらったのである。心斎橋の駅から歩いたような気がするし、「ヘミングウェイ」の名前を冠するとは趣味がいいと店の人に先輩がエラそうに言った覚えもあるし、店でエラく楽しかったので上機嫌でホテルに戻った記憶もあるし、なのだけれども、気持ちよく酔っぱらったのか店の記憶はあまりない(笑)。ただ、「楽しかったいい店」として私の脳裏には名前が残っていた。
お客が過ごしたおいしい時間や関係性が肝
でも、それでいいのかなと思う。料理や店内の写真が満載で嬉しいものの、この本の凄みは、その店で江さんが長年通って過ごしたであろう時間、つまりお客が過ごしたおいしい時間や関係性の濃度、それに尽きる気がするのだ。
なお、掲載されたほとんどの写真は、著者が客として来店した際に撮影したものだそうだ。どこか温かみがあるのはそのせいだろう。そして、カバーや文中にあるイラストは、先日亡くなられた長友啓典さんによるもの。本を楽しく読んで描かれたであろう空気が、イラストからにじみ出てくるのである。
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