「オフィス外勤務」が一向に普及しない理由 ママでも台風でも柔軟に働ける仕組みだが…

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まず、優秀な人材を活用することができるようになります。日本では従来、同じ場所で、同じ時間に画一的に働くワークスタイルが主流でした。それがテレワークによって時間や場所にとらわれることなく働くことが可能となれば、これまで時間的・場所的な制約によって十分能力を発揮できなかった人材を活用することができます。

育児や介護中の人はもちろんですし、配偶者の転勤等によって退職を余儀なくされたりしていた人にとっても、在宅勤務ができれば仕事を続けられる可能性が広がります。実際、テレワークが認められたことで、夫の海外転勤に同行しても、それまでの仕事を続けることができ、国境を越えて活躍しているケースがあります。自分自身が病気になった場合でも、治療と仕事の両立が考えられるでしょう。

最近は、転職活動をする場合に、「在宅勤務ができるか?」を有意な労働条件として考えている人が増えているといいます。ある程度の裁量をもちながら柔軟に働ける雇用環境を用意することは、人材確保という視点からもメリットと考えられるでしょう。

そして、仕事の効率性アップも期待することができます。職場以外で仕事をするためには、資料のデータ化が必要となり、おのずとペーパーレス化が進むでしょう。さらに、在宅勤務の場合は、通勤による心身の疲労も、家と会社の往復にかかる時間を奪われることもなく、その分集中して業務を行うことができます。モバイルワークの場合でも、移動やアイドル時間を有効活用できるようになります。

さらに、企業が自然災害などの緊急事態に遭遇したときのBCP(事業継続計画)対策としても、テレワークは有効だと考えられています。地震も台風も、いつ起こるか予測はできません。パンデミックやテロなど、有事の際にも、速やかにBCPを実行するためには、平時から会社以外の場所で、いつでも誰かが働けるようにしておくことは大変重要です。いわば、リスクマネジメント対策の1つの選択肢ともいえるでしょう。

それでも導入率は16.2%にとどまる

これらのメリットがあるにもかかわらず、現時点では二の足を踏んでいる企業が多いのが現状です。国内におけるテレワークの導入率は、わずか16.2%(総務省「平成27年通信利用動向調査」2016年)にとどまり、特に中小企業での導入率が大変低い状況です。「導入していないが、具体的に導入予定がある」と回答した企業と合わせても全体の2割程度となっています。いったい、どこに原因があるのでしょうか。

導入をためらう企業が多い理由の1つには、IT環境整備のための初期投資と、社内制度の見直しが必須になる点にあります。

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