中国が超速で「スマホ先進国」になれた事情

日本とはいったい何が違ったのか

スマホのOSはオープンプラットフォームなので、誰にとっても公平な舞台である。アイデアがあり、技術力がある人が優れたアプリを開発し、他の企業に高値で買収されたり、上場まで行きつけば、大富豪となることは夢物語ではないのだ。

現在人気の出前アプリである「美団」の創立者である王興氏は、清華大学を経て米国の大学院博士課程というエリートコースを捨て、2004年に中国版Facebookともいえる「校内網」を作り上げた。ユーザーが膨らんだ後、他社に買収され、その後「人人網」に名称を変更。ソフトバンクグループから4.3億ドルの出資を受けて、その後上場した。王氏は、その後いくつものSNSサイトやアプリを作ったが、中でも、出前アプリの「美団」がアメリカの投資者に注目され、巨額の融資を得た。フージワーフ研究院が発表した2016年中国IT富豪ランキングでは、37歳の王氏が35位にランクインした。

若い世代に夢を与えた「スマホ社会」

彼だけではない。米Uberの中国法人を買収した「滴滴」グループの創立者、写真加工アプリを当てて上場した「美図」の創業者、そしてもちろん、いまや"帝国"と言っても良い「アリババ」グループを作り上げたジャック・マーもそうだ。彼らは、親のコネに頼らず、自らの能力で道を切り開いた。自分の信念を貫き、試行錯誤を重ねて成功した人だ。

こうしたスマホ社会での成功例が、自分の将来を悩む若者に希望を与えた。コネがないと出世できない職場より、アイデアの実現に没頭したほうがいい。上司の機嫌を取ることに必死でいるより、公平なネット社会で勝負したほうが、たとえうまくいかなくてもせいせいするし、もし、うまくいけば大儲けできる。頭の切れる中国の若者たちは、ネット業界に急速に流れ込み、スマホ社会の進歩を支えるようになった。

中国のトップレベルの頭脳がネット業界に集まると、投資先を探すベンチャーキャピタルからの注目を浴びるのも当然のことだろう。実際に今、良いアイデアとそれを実現できる力の持ち主をネット業界で探し当てようとするベンチャーキャピタルは非常に多い。

こうして、スマホの普及と、それによって訪れたビジネスチャンス、そして今までとは違う「成功」を求める若者たちによって、中国のスマホ社会は急速に進化してきた。

最近では、アリババをはじめ大手ネット企業と実店舗とが連携する動きも出てきている。日本に訪れて百貨店の「おもてなし」に感激することからもわかるが、中国の消費者は「体験」を心の底から重視している。スマホを通じたネットサービスではカバーできない実体験があり、家族団らんのイベントはリアルでないといけないからだ。

現在の中国は、いったんスマホサービスに特化しきったところから方向転換し、実店舗も交えてショッピング体験のレベルアップとイノベーションの可能性を模索し始めたところだ。実は今、日本企業には、その世界的に優秀な実店舗の運営ノウハウ、おもてなし技術を中国に輸出する絶好の機会が訪れているのではないだろうか。

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