成績下位クラスの子が「下剋上する」方法 「錯覚を引き起こす」とうまくいく

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通常、私は基本的に褒めるということを教育現場では行わずに「いいね、じゃ次いってみよう!」というように「承認」をしていきます(過去の記事でも「褒める」のではなく「承認」が大切と書いています)。

ですが、上記の例の場合は、完全に“非常事態”なので、「徹底して“連続”して褒めること」を行います。

「簡単な問題をやる→ できる→ 褒める」というこのサイクルをしばらく続け、徐々に小5→ 小6→ 中1→ 中2と学年を引き上げていきます。毎回、できるたびに「よし。OK!」「この問題できれば結構いい感じだ!」と進めていき、ときには「ここまでこればもう大丈夫」というように安心感を与えていきます。

繰り返しの効果

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これらはうそを言っているのではなく、大げさに言っているだけですが、大げさといっても、もちろん、子どもに「今、自分を励ますために大げさに言っているな」と思われては台なしです。そのような、大げさすぎる褒め方は良くありませんが、承認する頻度を高くしていかないと、できる気にはなりません。

そうすると繰り返しの効果が働いて、「ひょっとしたら、自分は伸びているのかもしれない」、極端な場合「僕(私)は天才かもしれない」とすら思う素直な子もいることでしょう。

これが自己肯定感を引き上げる第一歩なのです。

以上のようなプロセスを続けていると、だんだんと解ける問題のレベルは上がっていきます。いつまでも簡単な問題ばかりやってはいられませんから。そうすると、わからない問題や間違える問題も出てきますね。そうした場合でも、自己肯定感や自信をすでに持ちつつありますので、「いや、出来るはずだ」という気持ちで、その子は問題に前向きに取り組みます。するとできる可能性が高くなるのです。

しかし、やっているうちに、中にはできない、わからない問題も出てきます。もともと自己肯定感が低いところからスタートしているので、すぐ元に戻る可能性があるのです。ですからそのようなときには、次のように言います。

「あ、この問題はね~、難しいんだよね~。今から説明するから、その説明が理解できればいいよ」(この「~」の部分でニュアンスを感じていただきたいのですが、このような軽い感じで、深刻にならないということがポイントです)

この言葉で、生徒は、「自分は大丈夫なのだ」と自己認識し、また自信を持って進んでいきます。ある程度、このようなことを繰り返していると、もう先生の励ましや褒めるということは必要なく、「いいね」という簡単な承認だけでぐんぐん伸びていったのです。

梶田さんのお孫さんの場合、まだ小4ですから、挽回することは十分可能ですし、時間もそれほどかかりません。小学校1年の漢字や計算からはじめて、徐々に学年を上げていくほうが、現在の小4のできない部分を教えてやらせるよりも、早いかもしれません。以上のような方法を、ぜひご家庭で試されてみてはいかがでしょうか。そしてぜひ、お孫さんに自信を持たせてあげてください。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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