浅尾の“失敗学”
この「小さな積み重ね」という言葉にこそ、浅尾の哲学が潜んでいる。一般的に目標は「短期、中期、長期で立てろ」とか「高く持て」と言われるが、浅尾の考えは対照的だ。
「自分は次の日のことしか予定を決めたくないタイプなのです。だから高い目標は立てないようにしています。何試合登板とか、防御率は何点台とか、届くか、届かないかギリギリのところにしか立てないですね」
2013年の目標は、「1年間1軍にいること」だった。
「簡単そうに聞こえますけど、実際にチームでそれを達成するのは3人くらい。1軍にずっといるということは、打たれてもいないですし、ケガもしていない。それが毎年の目標で、変わらないですね」
今季はシーズン開幕前に右肩を負傷し、3月のワールド・ベースボール・クラシックに出場できなかった。ようやく復帰したのは、ペナントレースが後半戦に差し掛かる直前の7月中旬。シーズンが始まる前から目標を達成できず、感じたことも多いだろう。
浅尾は昨シーズンも右肩をケガしているが、こんな話をしていた。
「昨年だいぶ自信をなくしたので、今年はまた1からですね。毎日試合に出ていると、1軍で投げるワクワク感が薄れてきたりするんです。正直、1軍にいるのが当たり前と思っていた部分もありました。2軍にいたときは周りも本当に必死ですし、僕も早く上がりたかった。実際に1軍に上がったときはすごく緊張しましたしね。1軍と2軍では緊張感が全然違うんですよ」
誰しも失敗は避けたいものだが、同時にキャリアアップを果たすうえで必要不可欠なものでもある。成功以上に、学ぶべきものがたくさんあるからだ。だからこそ、浅尾は達成できるかギリギリのラインに目標を置くのだろう。実現できなければ原因を探し出して向き合い、クリアできれば少しハードルを高くすればいい。
「成功して当然、失敗すれば非難される」という浅尾の“失敗学”には、学ぶべき発想法がたくさんある。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら