第一人者が語るドキュメンタリー映画の変化

主張抑えたフィクション風の作品に高い評価

「面白いのは、何がフィクションで、何がノンフィクションなのかという区別よりも、何が真実か、何が真実でないのかという区別がなされているということだ。スタートの地点では現実を撮っていても、やがてそれがとても美しいものに昇華される。僕は映画を作るときに脚本は書かないし、こういう風にしてくれと人物に言うこともない。その代わり、時間をかけて何かが起きる瞬間をただ待っている。映画作りで最も重要な友は『時間』だよ。そこに真実をとらえられればそこに魔法が生まれるし、そこには美しさが生まれるんだ」

ロージ監督は、前作『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』で2013年度ヴェネチア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)を獲得しており、2作連続で世界三大映画祭の最高賞を受賞している。ベルリン、ヴェネチア両映画祭でドキュメンタリー映画の最高賞受賞はロージ監督の作品が初となる。

真実をとらえることが重要

医師が少年を診察するシーン。依頼をして撮影したかのように見えるが、ありのままの出来事をカメラに収めた©21Unoproductions_Stemalentertainement_LesFilmsdIci_ArteFranceCinéma

「両映画祭もフィクションの作品が出品される映画祭だと思われがちだが、そこでフィクションと同様に扱われ、どちらの映画祭でも最高賞を獲得することができたのは本当にうれしいこと。しかも今年はアカデミー賞外国語映画賞にも選ばれた。イタリアでドキュメンタリーが選ばれたのは初めてのことなので、とても光栄だ」

ベルリン国際映画祭で審査員長を務めた女優のメリル・ストリープが「想像力に富み、現代を生きる私たちに必要な映画。今すぐ観なくては!」とコメントを寄せるほどに心に迫るものがある。しかし、ハリウッドのエンターテインメント作品とは対極の作品世界である本作を制作することに困難はないのだろうか?

監督も「確かに僕の作る作品は、ハリウッド映画のような大勢の人に届くような作品ではないかもしれない。たとえ大きな映画祭に出品したとしても、最高賞をとらないと注目されない。2番目ではそこまで注目は集まらないという点では、確かに制作するのにリスクがある映画であることは否めないね」と認める。

ロージ監督の作品は国際映画祭でグランプリをとったことで注目を集め、日本も含め、世界各国での上映がなされた。映画賞でタイトルを獲得することが、商業的には多くのマーケットを獲得する近道にはなるが、「だからといって、映画を制作している最中は、映画賞のことや、商業的な要素についてはまったく考えないし、それによって作品作りのアプローチを変えることはない」とキッパリ。そうした強気の発言ができるのは、ヨーロッパにおける国の公的な助成金によるところが大きいのだという。

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