『an・an』流、女子の"気分"のとらえ方 売れるも売れないも”僅差”だった!

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それならばと、「いまの自分より、少しよくなればいい」という意味を込めて、「自分史上最高の」というフレーズで打ち出してみました。表紙にも、あえて女優やタレントを載せなかった。この特集のために石原さとみさんを取材していたので、通常は当然、表紙にするところなんです。でもあえて、誰ともわからない、ただ女性の脚だけを大写しにした表紙にしました。

タレントなしの表紙は、販売を担当する部署からは不評だったのですが、結果的にこの号はよく売れました。同じ人気テーマですが、これまでの気分との微妙な温度差を、うまく誌面に反映できたケースだったと思います。

過剰なあおりは、すぐ見破られる

――逆に、こういうやり方はダメだなと感じる商品やサービスはありますか?

消費者本意でない過剰なあおりや、ウソ。これはダメですね。すぐに見破られます。“僅差”が勝負になる厳しい時代であるだけに、“僅差”で地雷を踏むこともあるので、シビアですよ。

『an・an』でも、「演出を間違えたかな……」と反省する号が、少ないですが、あります。このネット時代にわざわざおカネを払って雑誌を買ってくれる読者ですから、情報感度は本当に高い。しかもブログやツイッターで、自分からも発信していく人たちなので、誠実さは厳しく問われますね。

――最近の女性の気分には、具体的にはどんな傾向がありそうでしょうか。

特にアラサーの女性は、恋愛にしてもダイエットにしても、願望というより不安や悩み、痛みを感じている人が多いように思います。だからこそなのか、そういう危機感を全面に押し出すような刺激の強いタイトルをつけると、敬遠されるようになってきました。これは昨年まではなかった傾向です。

おそらく、これまで悩みに悩み抜いてきた読者は、もうおカネを払ってまでネガティブなことを聞きたいとは思っていない。それよりも今は、「自分はこれで大丈夫なんだ」と思えるような、ポジティブなメッセージが求められている。最近のアベノミクスも関係しているのでしょうか(笑)。

――一方でさっきの「自分史上最高の……」のように、自分の限界を意識したり、現実的になっているという側面もあるでしょうか。

あると思います。願望・妄想はとても強いのですが、自分が置かれている状況をよくわかっている。『置かれた場所で咲きなさい』という本がベストセラーになったように、まさにそんな気分なんだと思います。身の丈にあった幸せというか。

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