「近未来の管理社会」描く小説が人気のなぜ 古典「1984年」から最新作まで
現実がディストピア小説の世界に近づいた?
個人の自由が制限された全体主義的な近未来の管理社会を描いた「ディストピア小説」。『1984年』などの古典作品から、2009年に夭折した作家・伊藤計劃の作品まで、今また注目されている。
ディストピア小説の代表といえる、1949年に出版された英作家ジョージ・オーウェルの『1984年』。翻訳版を出版している早川書房では、「この半年で重版が続き、4万部が売れました」と同社執行役員の山口晶さんは話す。
小説で描かれる近未来は、「ビッグ・ブラザー」と呼ばれる権力者により支配される全体主義国家が舞台だ。米国ではトランプ政権誕生後に現状と似ているとしてベストセラーとなっている。日本でも同様だが、実はその前から売れ行きが伸びていたと山口さんは話す。
山口さんによると、現在の版になった2009年から16年までの7年間の発行部数は22万部。72年に出版されたその前の版は08年までの36年間で58万部の売れ行きだったことを考えると、ここ数年の伸びが目立つ。
「09~10年に出版された村上春樹氏の『1Q84』の影響で6万部が売れましたが、残りの16万部は、12年に安倍政権になってから、特定秘密保護法や安保法制といった政策が話題になるたびに売れました。日本のほうがアメリカよりも先にディストピア小説が合うようになっていたと思います」(山口さん)