そして、ネジザウルスシリーズをはじめMPDPの法則で次々とヒット商品を開発した実績を評価。2013年春、まだ50代の高碕社長に、工業分野の最高峰「黄綬褒章」が授与されます。高崎社長は「一緒に汗を流した社員やその家族と喜びを分かち合いたい」と、ネジザウルス片手に喜びをかみしめました。
ネジザウルスの意外な応援団
新商品開発に迷っていた頃、もうひとつ「ご愛用者カード」から意外な発見がありました。どこで商品を知ったのですか、という質問に「世田谷ベースで見ました」と書いてきたお客様がありました。当時、高崎社長は「所さんの世田谷ベース」を知らず、世田谷つながりで東京営業所に問い合わせたところ、BSフジで毎週放送していることがわかりました。慌ててお礼状を書き、それに対して所ジョージさんの事務所からも返信が届きます。以来、今日まで交流が続いているそうです。
最近の高崎社長の著書『「ネジザウルス」の逆襲』(日本実業出版社)の帯にも、所ジョージさんの推薦の言葉が載っています。「必要とされる工具はいつもキレイだ」――所さんのネジザウルスに対する愛着が伝わるコメントです。そして、こうした恩に何とか応えられないかと考えてひらめいたのが、社運を懸けた新商品の愛称でした。
ネジザウルスGTの「GT」とは、どういう意味でしょうか。会社のホームページには、トラスネジも外せる、という意味の「Grip a Truss」だと説明しています。そしてもうひとつ、高崎社長はその2文字に別の意味を込めました。
恩人・所ジョージ George Tokoro の頭文字でもあるのです。社長はささやかなお礼といわれますが、その感謝の気持ちが、次のビッグヒット商品にも引き継がれます。コンパクトさとパワフルな切れ味、という矛盾する機能を併せ持った画期的ハサミです。その名も「鉄腕ハサミGT」。しっかりGTの2文字が刻まれているのです。
最後にネジザウルスのアメリカ進出の話です。
代理店を通じてアメリカでネジザウルスを発売し始めましたが、まったくといっていいほど売れません。現地の調査で浮かび上がった理由は、日米の文化の違いということでした。アメリカでは、恐竜はかわいらしいイメージで、モノをかむといった荒々しい印象はないのです。では恐竜に代わる存在は何か、ということで最終的に落ち着いたのが、欧米の代表的モンスター「吸血鬼」でした。アメリカ版ネジザウルス「ヴァンプライヤーズ VamPLIERS」の誕生です。
ヴァンパイヤとプライヤーを合成した造語で、思い切って愛着のあるネジザウルスの名前を捨てました。グリップの色も血の色を思わせる赤色に変更。その結果、翌年は30%の大進展になりました。海外の市場に進出するには、それぞれの国の文化風土の違いにも配慮した販促方法(P=プロモーション)が必要ということを学びました。
アメリカはDIYの本場なので、外せないネジに手を焼いている人たちは日本より圧倒的に多いはずです。”日本製吸血鬼”が全米を席巻する日がやってくる日は意外に近いのかもしれません。
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