日本がトランプ政権でも「重宝」されるワケ 安定している日本は世界で希有な存在だ

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また、韓国で日本との合意に反対する韓国の進歩的政治勢力が勢いを増していることによって、歴史問題に関する日韓の緊張感が再び高まる危険性もある。一方、日本の安倍政権でも極端な民族主義的な思想をもつ一部の閣僚によって、日本が挑発的な行動に出る懸念もある。

安倍首相が憲法第9条の改正を追求することは、安全保障分野における進展を潜在的に損なう危険性を伴う。中国と韓国との緊張感を一段と高める懸念があるが、もっと深刻なのは、日本国内で強い反発を呼び起こし、より広い範囲での安全保障や秩序を保つうえで重要な役割を担うようになっている日本の存在感が弱まることである。

経済政策においては、景気回復に向けたこれまでの取り組みと、成果がひっくり返されることも考えられる。成長を持続させるには、外国人による投資や貿易面での開放を一段と進めると同時に、日本国内のイノベーションを促進させる政策が今以上に必要だ。日本は人口減少や労働力不足など、長期的な人口動態上の問題にも直面している。トランプ大統領による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの撤退は、日本国内に根強い市場改革や開放に対する反対意見を後押しすることになったかもしれない。

米国が推し進めるべき政策

こうしたなか、米国は以下のような政策を推し進めるべきである。

・米国と日本は、日米安全保障協議委員会を含め、軍隊間の共同緊急事態計画と運営協力を深めるために早急に動くべきである。

・米国は、海兵隊のグアムへの新施設の再配置を進めるために、沖縄を含む日本に駐留する米軍の基本的な取り決めを見直し、それに基づいて辺野古の補充施設の必要性を再考するよう提案すべきである。

・米国は、北朝鮮の抑止力を強化するだけでなく、中国の軍事力拡大に対応することを念頭に置き、本州および九州に拠点を置く米海軍と空軍の増強必要性を検討する必要がある。

・米国は、第9条の改正を支持する提案を含め、憲法改正に関して日本国内の内部討論に干渉するように見えるコメントを避けるべきである。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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