トランプに投票の元日本人が見た米国の変化 「約束された明日」はなくなった
日本では経営者だった
「狂気になれ」――これは、私が日本で会社を経営していた時代に、人生の大先輩が贈ってくれた言葉だ。2016年11月8日、アメリカ合衆国大統領選挙投票日。第45代アメリカ大統領が誰になるかを見守る間、ずっとこの言葉が私の心にこだましていた。
私は2013年の終わりから、ワシントン州シアトルの近郊に住み、アメリカで会社を経営している。それまでは東京のど真ん中で暮らし、そこでも会社を数社経営していた。初めて独立したのは20代半ば。30代は夢のように過ぎていき、手掛けたいくつかの事業は、とてもうまくいった。
当時まだ日本に上陸していなかった「ピラティス」というエクササイズをアメリカの大学と提携して日本に広めたり、自分の会社に所属させていた音楽家や作家、トップ・アスリートなどを世に送り出し、国内外の大きな舞台やイベントなどに出演させるような事業は、手掛けた多くの仕事の中でも特に楽しいものであった。
もちろん失敗もたくさんした。人知れず眠れぬ夜を過ごすことなども、珍しいことではなかったし、部下からの信頼を失って苦しくなったこともあるが、会社や仕事をやめたいと思ったことは一度もなかった。
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