トランプに投票の元日本人が見た米国の変化

「約束された明日」はなくなった

まったく落ち着くことのない毎日の中で感じるアメリカは、旅行で出会うアメリカとも、日本のニュースや書籍で知っていたアメリカとも違っていた。そして実際にさまざまな土地に住んでみて感じたアメリカも、私が「知っているつもり」だったアメリカとは大分違っていた。

しかも、主人がアメリカ国家に従事していることから、そのうちに「私はアメリカ合衆国と結婚してしまったんだ」と思うようになった。「国のオーダー(命令)」には絶対に従わねばならない立場におかれ、外側から見ただけではまったく理解することができなかったアメリカという国の仕組みを知るようにもなった。

アメリカ人になったワケ

アメリカへの移住、弟の死、日本の会社の代表退任など人生で経験したこともないほどの紆余曲折を何とか乗りきって、私は2015年に自らの意思で「アメリカ国籍」を選択した。主人の仕事の事情や、弟を失い一人日本に残した母をアメリカに呼び寄せるためである。政治家の二重国籍問題が記憶に新しいと思うが、日本の法律では二重国籍は認められていない。また、合法的な条件を満たす形で母をアメリカへ呼び寄せるには、私にはこの国の市民権(通称グリーンカードは「永住権」であり、市民権とは異なる)がどうしても必要だった。

隠れて二重国籍を維持している人はいるようだが、私は自分のルーツである日本の法律への敬意、育ててくれた国への感謝をもって、日本への国籍喪失届を提出した。また、移民として私を受け入れ、私に新たな人生を、文字通りゼロからスタートさせてくれるというチャンスを贈ってくれたアメリカという国に対しても、その国旗の前で忠誠を宣誓した。

そもそも、アメリカ人になったからといって、私のルーツが日本であることは変えようがない。多くのアメリカ人がそうしているように、これからも自らの日本人というルーツは大事にするだろうし、それは一生変わらないだろう。さまざまな民族と文化の混合こそが、アメリカのアイデンティティの軸を作っていることは疑いようもない事実だ。

市民権取得の宣誓式でも、それは感じた。さまざまな出身国、肌の色、宗教的バックグラウンド。しかし、私たちはみな同じ「アメリカ人」。この国は、多様性を尊重し、個人の選択を重んじる場所の「はず」であった。

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