マイクロソフトの大改革は実を結ぶのか? バルマーCEO直轄体制へシフト、組織再編後の課題

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組織の壁を壊す過程で、血も流れた。昨年11月、ウィンドウズ部門プレジデントのスティーブン・シノフスキー氏がウィンドウズ8発売直後という異例のタイミングで退任。今年7月には07年以来、ゲーム機Xbox部門のプレジデントを務めていたドン・マトリック氏が退任し、ソーシャルゲーム最大手ジンガのCEOに転身した。こうした幹部は部門の独立性こそが重要との考えを持っており、他部門との話し合いをできる人材を重視するバルマー氏の考えとは相いれなかったようだ。

3度目の大改革

では荒療治の成果は出るのか。マイクロソフトは過去に歴史的な改革を2度実施した経験がある。1995年にネットスケープ・ナビゲーターに対抗する「インターネットシフト」、00年にはリナックスなどのフリーOSを取り込むための「ドットネットシフト」を行い、いずれも実を結んでいる。

その伝で行くと、今回の「デバイスシフト」も成功する可能性はある。しかし、今回は敵(アップル「アイフォーン」)の登場から組織改編までに、あまりに多くの時間が経過している。時代に合わせて俊敏に組織を変えてきた頃とは単純に比較できない。

バルマー氏はメールの中で「有能な新入社員が『世界を変えるためにマイクロソフトへの入社を選んだ』と話すのを聞くと、刺激を受ける。それこそが私たちが今日やることだし、明日やることだ」と訴えた。カリスマ幹部の退社により、若手が働きやすくなった、との声もある。いかに新しい才能を引き出すかが、これからの課題といえるだろう。

(週刊東洋経済2013年7月23日号)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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