――お腹をこわしたら?
そのときは使わない(笑)。でも、こわさなかったので映画に反映させました。それから猫用の缶詰も食べましたし、食べられるといわれる雑草も食べました。そういうことを実践する取材でしたね。それから電力会社、ガス会社、水道局、さらに大学で教えている化学の先生などにも話を聞きました。
疑問に答えられるよう徹底的に調査
――電気が使えないことでそれがガス、水道へと波及していくという描写は驚きでした。
やはりライフラインがどこまで止まるのだろうということが、いちばん興味深かったです。そこは家族が東京を離れる理由にもなる部分なので、詳しく話を聞いています。話すと長くなりますが(笑)、そもそもガス自体は止まらないそうです。ガスのマイコンメーターは電池式で、地震のときに揺れたらガスをシャットアウトするという機能が付いています。しかし、メーターの電池は切れる前に必ず交換をするものなので、ガス会社の人も電池が機能しなくなったときどうなるかは「私たちもわからない」というのが答えでした。
でも、なぜ劇中でガスを止めたかというと、ガス会社の人たちが、「今回の映画の設定だったら大元の栓を止めに行きます」と言ったからです。たとえば高層マンションの場合、各家庭にメーターが付いていますが、その元栓は電気式です。もしそれが使えなくなると、ガスは空気より軽いので、高いところにたまってしまう。下の階層ほどガスが使えなくなる一方、上の階層の人がガスコンロを開いたときにはすごい勢いでガスが出て、火事になる可能性がある。
ガス会社の人も「そういう事故がないようにいちばんの大元を全部閉めに行きます」と。それを細かく描写すると長くなるので、映画の中には具体的には出していません。でもそういうような、いちいち全部どうなるのだろう?ということを突き詰めていって、漏れがないように調査はかなりやりました。
――『ハッピーフライト』では、空港にいる鳥を銃で追い払うバードパトロールの人が物語のキーマンになっていました。取材では、そういった物語に使えそうなエピソードを探し求めるということはあるのでしょうか。
今回の作品は誰も体験したことがないので、聞ける相手はいません。どちらかというと、観客に「あれはあんなふうになるわけがないだろ」と言われたら、「それはこうだから」と答えられるように気をつけました。撮影のときにも、俳優さんやスタッフに、「脚本書いたのは監督だよね、なぜこうなるの?」と尋ねられたら、「これはこういう理由だから」と答えられるようにしている。モジモジしていたら現場は進まない。リアルをちゃんと知っておきたいので、その都度調査をしています。
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