近年はCGや合成の技術がどんどんと上がってきているので、スタッフも台本読んだときに、ここは合成にすればいい、ここはCGで、ここはスタジオで撮ればいい、というのが読めるようになってきている。それはスタッフだけでなく、観客もそうだと思います。そうすると緊張感がなくなってしまう。スケールの大きな映像だけど、「本当はやってないな」と思われる。物語は理解できても、本当にあることだとは思ってもらえない。どこかで冷めてしまう気がしたので、「この映画でそれはやりたくない」と宣言しました。スタッフは慌てていましたね。
――本当にそんな場所があるのかということですね。
でも、よくぞ見つけてきてくれたという場所が各地にあった。でもいざ、クランクインしてみると今度は俳優さんたちが面食らっていた。毎日毎日、車に揺られて着いた先にはちゃんと高速道路がありますし、自転車にも乗らないといけない。本物の豚だって捕まえなきゃならない。「川を渡る」と台本にあったら、本当の川に連れていかれて、渡らないといけない。本当のサバイバルみたいなことを俳優さんたちにもさせてしまったので、かなり大変だったと思います。その甲斐あってああいう映像を撮ることができました。そして、誰もケガせずに撮影を終わらせることができたのはよかったです。
高速道路を通行止めにして撮影
――無人の高速道路のシーンというのも驚かされます。
あれは朝8時から16時まで通行止めにして撮影をしました。16時を超えると車が走ってきてしまうので。安全確認をしながら撮影を進めました。そういう各地域に住んでいらっしゃる方たちの日常のすき間をお借りして撮影を進めています。ハリウッドみたいに「このビル、全部爆破していいですよ」みたいなことは日本ではありえませんからね。
――矢口監督の映画では、今までもナット・キング・コールの「LOVE」や、フランク・シナトラの「カム・フライ・ウィズ・ミー」など、印象的な曲が使われてきました。そして今回もスティーブン・フォスターの「Hard Times Come Again No More」をSHANTIさんが歌っています。音楽へのこだわりというのはあるのでしょうか。
そうですね。やはり昔と違って、映画って公開したあともDVDとかいろんな形になって繰り返し観てもらえます。何年経っても「この映画にはこの曲がピッタリだよね」という音楽を付けたいという気持ちは一貫してあります。有名な人が歌うかどうかということよりも、映画に合った曲かどうか、という視点だけで選んでいます。
――最後に。こうした大停電が起きて、サバイバルをする場面に直面したとき、矢口監督は何が重要だと考えますか。
やはりポジティブシンキングですかね。「もうあかん」と思ったら、おそらく心も体もどんどんダメになるのでは思います。鈴木一家は旅の途中で、時任三郎さんや藤原紀香さんらが演じる斎藤一家に会います。鈴木一家はどん底まで落ち込んでいますが、斎藤一家は「全然楽しいじゃない」と言って、この状況を楽しんでいます。この生命力の差って結構大きいと思いますよ。ですから、まずは生き延びるために前向きに考えることが大事だと思っています。
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