・金融規制改革法署名で進む金融バブルの再燃?……トランプ大統領は、2月3日「金融規制改革法(ドッド=フランク法)」の見直しに関する大統領令に署名した。一連のリーマンショックに至るまでの金融危機の反省から、金融危機に備えて銀行に対して自己資本増強の義務化、定期的なストレステスト、デリバティブ取引の監視強化などを盛り込んで、オバマ政権が成立させたものだ。
銀行の自己勘定取引を制限する「ボルカールール」などもドッド=フランク法に含まれる。共和党は、大統領選挙前からウォール街の意向に沿う形で見直しを宣言しており、銀行と証券会社を分離させ、少ない自己資金でレバレッジを利かせた自由な金融取引が可能になる体制に戻そうとしている。
トランプ大統領の側近には、ゴールドマンサックス出身者が数多くいて、これでまたリーマンショック以前のような、デリバティブ取引や証券会社の自己勘定部門の活発な取引が復活することになり、米国は再びバブル経済に沸く可能性が高い。米国経済のバブルは当然ながら金利高を導く。
世界の趨勢に沿って法人税引き下げる!?
・法人税引き下げ競争がスタート……トランプ大統領の公約のひとつに税制改革がある。特に、連邦法人税は現行の35%から段階的に15%にまで引き下げようとしている。さらに、EU離脱を決めた英国は、20%の法人税を17%に引き下げる方向で動いている。米英がそろって10%台の法人税を採用し“タックスヘイブン化”すれば、日本も世界の趨勢に沿って法人税引き下げに動かなくてはならなくなる。
2016年度に実効税率29.97%にまで引き下げたばかりの法人税を、さらに引き下げる必要に迫られるわけだ。当然ながら、税収が落ち込み、財政的にギリギリの状態が続く日本では、赤字国債の発行が増えて金利上昇圧力がさらに強まる。
・地政学リスクの高まりで軍備費増加へ……トランプ政権の誕生でにわかに現実味を帯びてきたのが地政学リスクだ。同盟国の首相にさえ電話会見でキレる大統領では、テロを起こした難民の国にミサイルをぶち込んでしまいそうだ。
日本でも、GDPの2%を超える防衛費の負担増が必要になり、年間5兆円の歳出増につながる可能性もある。ここでも歳出増、赤字国債の増加によって長期金利の上昇圧力が高まる。
トランプ政権の本当の狙いは、中国潰しだという報道もある。それが事実なら、日本本土も戦場になるかもしれない。日本銀行は返済の必要のない国債を大量に買い入れて、政府に防衛資金を提供する「財政ファイナンス」を実施する必要に迫られる。戦争の結果にかかわらず、貨幣価値が変わるほどの超インフレに陥るかもしれない。
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