実際に、12時半過ぎに指値オペを始めて14時過ぎには7239億円もの応札が集まった。急騰していた10年物国債の金利は0.090%まで下落。長期金利の急騰劇は終息したものの、7000億円超の資金を使って金利上昇を食い止めたわけだ。
こうした日銀の債券市場への介入は、今に始まったことではないが、ここまで日銀がなりふり構わず金利上昇を食い止めたことはなかった。なぜ、日銀はここまでして長期金利上昇を止めたのか――その背景には次のような事情がある。
長期金利上昇を止めた事情
(1)世界的な金利上昇傾向……トランプ政権の行うインフラ整備などの景気刺激策に対応して、世界中の金利が上昇傾向にあった。イールドカーブ・コントロールを実施している日銀にとっては、その方針に変更がないことを示す必要があった。
(2)トランプ米大統領の通貨安誘導発言……1月末にトランプ大統領が「日本は何年間も通貨安誘導を続けている」といった発言があったため、市場は通貨安誘導を疑われるような指値オペはしないのではないかと推測されていた。いわば、市場が日銀を試したともいえるが、日銀は断固とした態度で金利を抑えにかかったわけだ。
(3)日銀量的緩和の限界が近いという不安……日銀は、現在の量的緩和を今後も継続できるのか。長期国債の買い入れを継続させて長期金利の上昇を抑え続けられるのか。日銀がテーパリング(量的緩和の縮小)をするのではないか……。そんな不安が市場には漂っていた。そういう意味でも、日銀は断固たる姿勢を示す必要があった。
要するに、日銀や財務省が描いてきた長期国債の安定化というシナリオが、トランプ大統領の登場によって、危うくなるかもしれないというリスクを示唆したわけだ。そもそも「金利は本当にコントロールできるのか」という疑問もある。
日本国債は、10年以上にわたってひたすら高値(=低金利)を維持してきた。とりわけ、アベノミクスが始まり異次元の量的緩和がスタートしたあたりから「債券バブル」と呼ばれる状態が続いてきた。
ゼロ金利からマイナス金利へと移行し、日本の国債は超高値のまま売買されてきた。しかし、債券に限らずバブルはいずれ崩壊する可能性が高い。トランプ政権の誕生が、バブル崩壊のきっかけになるかもしれないのだ。
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