日銀がうろたえた長期金利の不気味な急上昇 トランプは日本国債にとどめを刺すのか

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周知のように、国債などのソブリン債はそのときの経済情勢に合わせて金利が上がったり、下がったりする。リーマンショック直後のギリシャショックをはじめとして、イタリアやスペインの長期金利も上昇して世界を不安に陥れた。長期金利が、危険ゾーンといわれる7%を超えれば、自国の力だけでは回復不可能となり、放置すればデフォルト(債務不履行)となる。

IMF(国際通貨基金)などの資金援助が必要となり、ギリシャなどはIMFや加盟していたEU(欧州共同体)の援助を受けた。

長期国債の金利急騰は、中央銀行の信用を傷つけ、極端な通貨安や輸入インフレを招く。日本政府としては何としても避けたいが、世界でも有数の債権国である日本の金利が急騰するはずはない、といった意見も数多い。長年、論争されてきたことだが、トランプ政権の誕生はこれまでの常識を覆すかもしれない。これまでと同じロジックや常識で日本国債の金利を議論していいものか……。不透明な時代だが、いくつかの可能性について認識しておく必要があるはずだ。

トランプ政権の誕生によって、日本国債の金利が上昇する要因には何があるのか。簡単に整理しておこう。

日本国債の金利が上昇する要因

・FRBによる利上げ……米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長は、最近の講演で2019年までに年2~3回の利上げを実施したいと述べている。早ければ、3月にも再利上げが実施される見込みだ。トランプ政権がこだわっている雇用も、実は失業率4%台で完全雇用に近く、今後さらなる金融引き締めを継続していく可能性が極めて高い。

基軸通貨である米ドルの利上げはドル高を招き、新興国ではドル資産の流失が深刻になるおそれがある。それを防ぐために世界中の金利がドル流失を回避しようと上昇傾向になる。日本にも同様に金利上昇圧力がかかる。

・金利上昇を招くトランプ政権の経済政策……トランプ政権が掲げる経済政策は、公共施設やメキシコとの壁建設といったインフラ整備、地政学リスクの上昇に合わせた軍備増強といった景気刺激策が多く、インフレを誘引するものといえる。しかも、低賃金で働いてくれる不法移民を強制送還するため、賃金上昇の原因にもつながる。インフレは金利上昇につながり、当初FRBが想定する以上に急激な利上げの可能性も出てくる。

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