――「新しいカナダ人」という言葉がとても印象に残りました。日本では難民が来たとしてもいつまでも「外国人」のままで扱われそうです。
カナダに来たらみんなカナダ人になります。しかし、カナダの特徴は元の国の文化も大切にしつつ、カナダ人として生活していることです。カナダになじむために、移民や難民がスムーズになじむためのサポートを使って言葉などを学びながら、各家庭ではそれぞれのルーツの言語を使うことも多いです。
カナダの公用語は英語とフランス語ですから、各地のコミュニティセンターなどで、英語とフランス語の授業が行われています。図書館も大きな役割を果たしていて、たとえばトロントの図書館では子どもの宿題をみるクラス、算数が遅れている子には算数のクラス、履歴書の書き方、カナダ国民になるときのインタビューの受け方の指導など、さまざまなクラスが無料で受けられます。移民や難民だけでなく、さまざまな国の人を受け入れる温かい雰囲気が当たり前にあります。
――日本人が行ってもなじんで仕事がしやすいでしょうか。
そう思います。それにカナダは教育水準が高いことに加え、優秀な人材もたくさん海外から入ってきていますから、人材確保もしやすいのです。よく言われているのは、難民は「人道的」に受け入れ、移民は「戦略的」に受け入れるということです。人材の例としては、トロントから130キロメートル西に行った辺りのウォータールーという地域にはICT産業のクラスターの一角があり、そこにはイノベーションを牽引できる人材や教育水準の高い優秀な人材が集まっていることで有名です。
キャリアパスは人によってさまざま
――どうやってそのような優秀な人材を育成しているのですか?
やはりいちばんの強みは多様性、そして失敗を認める文化もあると思います。カナダではみんなが大企業に入って生涯その会社に勤めるわけではありません。起業家精神も育て、失敗してももう一度新しいアイデアでやってみようとする気持ちを大切にします。みんなが同じようなキャリアパスを進むわけではないのです。
外交官も休みをとって民間で働き、戻ってくることができるのですよ。今よりさらにその機会を増やして民間で経験をするべきという意見もあります。
大学生が、大学と仕事を掛け持ちすることもできます。1学期間は大学に通い、次の学期は企業で働き、次は大学に通う……というのが当たり前に行われています。卒業までに5~6年はかかりますが、働いている期間は雑用などではなく、きちんと責任のある仕事を行うため、卒業のときには即戦力として働ける人材が出来上がっているのです。企業にとっても正規雇用をする前によい人材に出会え、育てられるすばらしい機会です。学生たちはカナダ国内だけではなく、世界中に散らばっていて、日本にも来ています。日本企業にとっても日本の企業のビジネスの考え方、働き方をよくわかった人をカナダで雇用できる絶好の機会だとよく話しているのですよ。
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