漁師さんにとっては日常の一コマだが、漁から帰ってくると、カアチャンが炊きたてのご飯と新鮮な刺身、海産物を出してくれるなんて、こんなぜいたくなことはない。
石巻に来て以来、たまに漁師さんに船に乗せてもらうが、石巻のオフィスで通常業務を行うのだから、体力的にもけっこうギリギリだ。
でも、やはり現場を見ないと生きた情報が伝えられないし、船に乗るのはやめられない。こうした取材を兼ねた海上のちょっとした手伝いで、漁師さんの生活のリズムもわかるし、商品となりうる魚、海産物にも詳しくなれるからだ。
ほとんど例のない、「漁業」で「IT」
東北に対して、IT企業・ヤフーは具体的に何ができるだろうか。
そのテーマのひとつに、東北の三陸沿岸部の主要な産業である漁業が挙がるのは、ある意味自然な流れだった。
三陸沿岸部の漁業は、地元を経済的、精神的に支える、産業の根幹だ。僕たちが最初に知り合った地元の企業も水産業が多く、ここを避けていくのはなんだかな、という思いがあった。
ただ、漁業はいまだ古い慣習の残る業界だという印象があった。
近頃、同じ1次産業でも、農業の分野はIT化が進み、プロモーションマーケティングなどをやり出す人が増えている。ソーシャルビジネスとして注目され、時代の「若い・新しい」流れにうまく乗っていると思う。一方、漁業はそういう話をほとんど聞かない。
しかし、東北の沿岸部をヒアリングに回っていたとき、「ECやネットショッピングで、漁業にITを近づけるというのはありかもね」という話は出ていた。ヤフー社内でも、社長・宮坂学が「漁業のIT化っていいじゃん」と乗り気だった。東北、被災地のIT化というより、よりフォーカスして、漁業のIT化を進めたほうがいいと。
ITの力で水産業を盛り上げ、成功したら、日本のほかの地域で大変な思いをしている漁師さんたちに向けて、サービスの横展開を目指していこう。ヤフーの中では、そんな方向に話が進んでいた。
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