ただ、この事件により僕らは、漁師さんらのこだわり、そして地元の誇りを尊重する重要性を痛切に感じた。
僕らとしては、地元の方々を巻き込んだ大きなプロジェクトにしたいと、複数の生産者とやろうとしたのだが、それが知らず知らずのうちに、一部の生産者の方々のこだわりにそぐわない形になってしまったのだ。
ほかの浜と、勝手にくくるんじゃねえ!
今回、問題となったホタテの産地のくくり方。
全国的に有名な「北海道ホタテ」に対抗するためには、インパクトのあるくくり方にしたい。しかし、協力してくれる漁師さんのおいしいホタテを集めて、どれもこれも同じ名前でくくったら、おそらく「勝手にくくるんじゃない」とまたクレームがくるだろう。
だからといって、「阿部勝太のホタテ」ではどこの誰だかわからないし、「北海道ホタテ!」と比べたら、ライオンとアリンコみたいになってしまう。本当はアリンコでも、チーターくらいに見せないと、インパクトがない。
初回の苦い経験から、それ以降は、すべての浜の漁師さんたちを徹底して尊重した商品設計にするよう、念には念を入れるよう心掛けた。
デカプリホに続く第2弾商品をカキに決めたときのこと。浜の男たちは誰に聞いても、「おらほ(おれたち)の浜のカキがいちばんうまい!」と、言う。
「じゃあ、ほかの地域のカキを食べたことがあるんですか?」と尋ねると、「いや、ねえ(ない)!」と答える漁師さんも結構いるのだが(笑)。
しかし、海の上で命を懸け、自分の仕事にプライドを持って取り組んでいる漁師さんは尊い。話しを聞くたび、漁の様子を見せてもらうたび、今まで生きてきて、まったく知らなかったことに出会った感動を漁師さんに伝えている。「あなたたちはかっこいい」「おっしゃるとおり、この海産物は最高においしい」「これを都会の人に伝えたら絶対に感動する」「売れますよ! これ!」
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