「交渉ベタ」が知らずに踏んでいる3つの地雷 問題は「スキル以前」にあった!

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問題解決の姿勢で臨むからこそ、場合によっては、お互いのやる気を増すようなクリエーティブな案が生まれることもあります。たとえばライセンサーとライセンシーの料率交渉であれば、「ある販売数量までは一定の料率。それ以上は、目標数量達成ごとに、料率が上がる」とすれば、お互いにたくさん売ろうとするインセンティブが働きます。ライセンサーは良いものを提供すると同時に自分でもマーケティングを支援する、ライセンシーは販売にまい進する、といった状況です。

地雷(2)目標値が低い

第2の地雷は、目標値が低いことです。本来、交渉というものは、

「目標値の高さが合意レベルを決める」

という性格があります。つまり、自分が高い目標値をもつからこそ、妥結結果も良くなるのです。

孫社長の場合は、先述のYahoo!への出資比率増に関して、ヤン氏たちは強い抵抗を示したとされます。しかし、孫社長は高い目標の達成を最後まであきらめず、さまざまな提案を交え、また相手の不安を何とか払拭することに努めることで、一見妥結不能と思われた交渉をまとめ上げました。

もちろん、むやみに高すぎる数字を最初からつきつけることは、相手の交渉意欲を削ぐ可能性があるため、注意が必要です。しかし実際にはそのようなケースよりも、最初から低い目標値しかもたずに、ほどほどの妥結結果で終わってしまうことが多いというのが筆者の実感です。

その大きな理由として、特に日本においては、謙虚さや控えめな態度が美徳とされやすいという事情があります。高い数字を切り出すことは「貪欲」「強引」との印象を与える可能性が高いものです。「他人から良い人に見られたい」という欲求はある意味自然ですから、無意識に「優しい」条件を出してしまうわけです。

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