シャープが鴻海との交渉に「失敗」した理由 リーダーはタフであれ、先に逃げたら負けだ
毒にも薬にもならないタイプの…
会社が危機に陥ったときには、思わぬ人が社長になったりします。長い間、会社の混迷が続くと、尖った人たちは抗争の中でどんどん飛ばされていってしまう。そして結局、しょうがないから、と出てくるのが、毒にも薬にもならないタイプのリーダーです。社内に誰も敵がいない。私心がなくて、いい人。タスクフォースのメンバーとしてかかわった、JAL(日本航空)の危機のときもそうでした。
こういうタイプの人は、まず現場を回ります。そして、現場に共感してしまう。「頑張ろう」と声をかけたりする。沈もうとしているタイタニックで、艦長が船員のところに行って「頑張れ」と言っても、どうしようもないわけですが、私心がなくて、いい人だから「頑張ろう」になってしまう。こういう人は社用車で通うのをやめて電車で通ったりもします。そして、社員食堂で一緒に食事をしたりもする。よくあるパターンです。本当にいい人なのです。
いい人だということは、シビアな交渉の現場で、冷徹な決断ができない、ということも意味します。冷徹な決断が求められる交渉の場でさえ、いい人に走ってしまうのです。
グループが債務超過に陥ったシャープは、ホンハイの傘下に入って再生を目指すことになりました。しかし、今回の売却に至った交渉の経緯は、あまりにもお粗末だったと言わざるを得ません。報道をみるかぎり、当初ホンハイから言われていた「リストラや事業売却はしない」という口約束は反故にされつつあるように思います。
これは、当時のシャープの経営者の交渉の失敗です。ネゴシエーションは、タフでなければいけません。そもそもネゴシエーションというのは、一種の戦争なのです。その意味で、ホンハイの董事長である郭台銘(テリー・ゴウ)は、強烈なタフネゴシエーターです。大きな買収の際などに出てくるのは、タフネゴシエーターと決まっています。
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