シャープが鴻海との交渉に「失敗」した理由 リーダーはタフであれ、先に逃げたら負けだ
そうした激しいゲームに日本人も慣れないといけません。「何もない一日を早く迎えたい」「平和な日々に戻りたい」と願っている人ではダメなのです。長い戦争状態がストレスにならない人材を育てないといけない。そういう人間を引き上げないといけない。会議での軋轢や不規則発言をストレスに感じている場合ではないのです。紛糾してきたら、「おぉ、面白くなってきたぞ。もっとやれ」と思わないといけない。そんなハードネゴができるリーダーが、これからは、ますます求められてくるのです。
リーダーは、タフになる必要があります。タフな環境をあえて選んでいく必要があります。現代は、タフな経験をする機会は、どんどん減っています。理不尽なことも、どんどん減っている。予定不調和や不確実な状況が、世の中から減ってしまってきている。生きるのが楽になっているし、予測可能性が高くなっている。
今の優秀なリーダーも、タフネスを身につけています。実際には、偶然の要素も大きい。日立製作所の社長、会長を務め、同社を復活させた立役者の川村隆さんは、乗っていた飛行機がハイジャックされて死にかかった経験を持っている。「ここで世界観、人生観が変わった」とおっしゃっていた。そういう経験が、後の人生に大きく影響したことは間違いないでしょう。
もちろん、こういった生死にかかわるような状況でなくてもいい。追い詰められたり、もめごとに巻き込まれたり、そういう経験は大きな意味を持ちます。普段からの本人の心がけ次第でも変わります。何かが偶然起きた時、それを自分の糧として大事にできるか。それを価値にできるか。同じ出来事でも、まったく反応しない人は、ボーッと、その経験が過ぎていってしまうだけなのです。
本気でリーダーになりたいのなら
もし、本気でリーダーになりたいと思うのであれば、みずからタフな環境を選んだほうがいい。そして、周囲はコイツをリーダーにしようと思ったら、そういうタフな環境に放り込んだほうがいい。気づきの可能性が高くなるから。あるいは、そこで自分の適性もわきまえられるから。
大きなストレスがかかり、「ああ、もうダメかもしれない」と追い詰められる状況で、アドレナリンが出て高揚感を得られるタイプなのか。それとも、ストレスに打ち負かされるのか。これは、やってみないとわかりません。実際、紛糾したり、もめごとがあったりすると、高揚感が漂って、むしろストレスを感じなくなる。気分が良くなる、という人もいる。そういう人はリーダーに向かって突き進んだらいい。
日産自動車のカルロス・ゴーン社長もそうだと思いますが、百戦錬磨の社長は皆、そういう傾向を持っていると思います。日産は三菱自動車を傘下に収めましたが、三菱自動車がぐちゃぐちゃになればなるほど、きっと燃えてくると思います。実際、久しぶりに楽しそうな顔に見える。ワクワク感が漂っている。
逆に、不安定な状況に耐えられない人、すぐ片付けたくなる人は、これからのリーダーには向いていません。平和主義者、紛争や軋轢がない状況が自分は心地良いという人は、リーダーにならないほうがいい。そういう時代がきているのです。
(構成:上阪徹/ブックライター)
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