東京「私学無償化」は家計にどう影響するのか 3年間で120万円の学費負担減は大きい

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住居戦略も変わってくる。前述のような「引っ越し族」であれば、今後は賢い住居戦略として、短期間で引っ越しを繰り返すという方法が最も得をする選択肢となるかもしれない。この場合、家を所有しないことが合理的である。

ただし、「無償化」という言葉に踊らされてはいけない。リーマンショックの余波で私立高校の学費を払えず退学せざるをえないという問題があったのを、覚えている方も多いだろう。私立はおカネがかかるのだ。今回のような政策が始まったからといって、身の丈に合わない私立への進学を目指すと、学費以外の出費に耐えられなくなる可能性もある。

たとえば、高校に通う場合、学費のほかに、部活動などの学校外活動費は文部科学省の学習費調査(平成26年度)によると、私立校の場合、年間25万5151円がかかるほか、修学旅行費や施設費などの負担もある。

また、交通費として毎年10万円以上の負担が平均的に発生することに加え、子ども同士、親同士の付き合いなどもある。さらに、大学進学を目指す場合、予備校代に加え、大学費という大きな支出が待ち構えている。国立大学の学費も安いとは言えない時代になった今、金銭的リスクを背負ってまで無理して私立高校に進学させる意味はないだろう。

クラス内で「学費負担格差」が生じることに

一般的に教育費の負担の重い時期は、幼稚園、保育園、専門学校、大学とされており、高校は公立と私立で学費の負担が大きく異なってくる。総務省の家計調査2015年によると、40~50代の支出に占める教育費の割合は5~10%と、平均月額2~3万円と決して高いとはいえない。しかし、子どもの教育費のピークは高校(私立)と大学であることから、今回の政策を望む家庭は多いだろう。

筆者は、高校に出前授業へ出向くことがあるが、そこで進路指導の先生たちから話してほしいと頼まれるのは、おカネの使い方や、おカネを稼ぐことに加えて、奨学金など借入金への理解を深めることである。大学や専門学校の学費負担に親が耐えられず、子どもが奨学金という名の借金を借りている実態や、進学そのものを断念している現状を見ると、実際は教育費が相当な家計の負担になっていることを認識せざるをえない。それを考えると、今回の施策は東京在住家庭にとっては万々歳というところだろう。

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