東京「私学無償化」は家計にどう影響するのか 3年間で120万円の学費負担減は大きい

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一方、同じ高校に通っていても、住んでいる地域によって負担する学費が異なるという問題も同時に生じる。机を並べるクラスメートと学費負担が異なることを、当事者である子どもたちはどうとらえるのか。格差解消が、別の格差を生むという事態に発展し、収入がある程度わかってしまうことによるいじめ問題の発生なども考慮しなければいけない。

普段の相談で感じるのは、そもそも子どもが生まれた時点で、教育費用の負担を踏まえた家計管理ができていない家庭が多いことだ。たとえば、子どもが生まれてすぐに家を買うケースが典型で、幼稚園あるいは保育園の費用を考慮せずに住宅ローンを組んで、入園と同時に赤字家計になる家庭はざらにある。また、将来子どもを大学に進学させようと考えたら、高校卒業までにおおよそ500万円貯める必要があるが、実はそのような蓄えがあるケースはまれである。

教育費が準備できていない家庭は多い

子どもが何人育てられるか気にする夫婦は多いのだが、実際に進学資金の準備をきちんとできているケースは少ない。第一子の進学資金は準備できたが、第二子以降は蓄えがなかったり、高校卒業以降の学費がないため、子どもが奨学金を借りざるをえなかったりと、教育費はあらかじめ準備できるはずなのに、できていない家庭は多いのだ。

今回のように局地的に、教育費の負担が増減すると、将来設計はより一層複雑になる。家族のために資金計画を立てる場合は、無償化をあてにするより、有償であることを前提として子どもの学費を準備する必要があるだろう。

多様な人々のライフプラン設計についてアドバイスする立場から言うと、妊娠期間中からライフプラン教育をする必要性を強く感じる。実際に、日本FP協会では、独自の取り組みとして高校へのインストラクター派遣を通じて早い段階で金銭教育を行っているが、人生におけるさまざまなライフステージやライフイベントごとに、ライフプランを見直すことができれば、先行きの見えにくい複雑な世の中で、明るい気持ちをもちながら暮らせるようになるのではないか。

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