「トンデモ」な健康情報には見分け方がある 出てきたら「怪しい」と疑うべき言葉はこれだ

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使い方によっては、水素は脳梗塞や糖尿病に効果ありとする論文が発表されており、臨床試験も進行中といいます。このような特殊な医療用途で、将来的に水素が使われる可能性はあります。しかし少なくとも市販の「水素水」のたぐいに、効果を期待すべきとは思えません。その他、「水素」という言葉を含む商品の話は、眉に唾をつけて聞いたほうがよさそうです。

「学会で発表」も当てにならない

『健康になれない健康商品』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「学会で発表、大反響!」といった広告も、信頼の根拠とすべきではありません。実は、学会というものは、参加料金さえ払えばどんな内容でも発表させてもらえます。学会は、あらゆる立場から自由に議論を行なうことを目的としていますので、事前審査で門前払いなどはしないことがほとんどです。大きな学会では、そうした怪しげな演目のみをまとめて片隅の部屋で発表してもらう、特別セッションを別個設けていたりもします。

論文として発表されている場合は、たいていは専門の学者の審査が入っていますので、学会発表よりは信憑性が増します。しかしそれでも間違いは完全に排除できませんし、怪しげな論文でも掲載料さえ取れれば平気で載せる論文誌も存在しています。必ずしも「論文が出ている」というだけで信頼できるわけでもありません。

怪しいと思える情報を、自分でネット検索して調べることも可能ではあります。しかし、業者の作った商業サイトが圧倒的に多く、正しい情報にたどり着かないことのほうが多いのが現状です。医学の専門知識のないライターが書いた記事が大量にキュレーションサイトに掲載され、大問題となったことは記憶に新しいと思います。

ひとつの方法として、調べたいキーワードにプラスして「反論」「ニセ科学」「トンデモ」などの言葉を付け加えて検索してみるのも手です。ネット上には、怪しい情報に反論している人が必ずいますから、その意見と見比べてみるだけで、ずいぶん判断の確度が上がります。

ウェブ情報の信頼性を確認する方法として、URLのドメイン名は一定の手助けになります。「go.jp」ドメインは政府機関の、「ac.jp」は大学の発信する情報ですから、相対的に信頼性の高い情報といえます。特に、国民生活センターのサイトはよくまとまっており、もっと活用されるべきでしょう。また国立健康・栄養研究所による「健康食品の安全性・有効性情報」のサイトは、各種論文情報がひととおりまとめられており、信頼性の高い情報源となりえます。こうしたサイトは、もう少し知られ、広く活用されるべきと思います。

佐藤 健太郎 サイエンスライター

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さとう けんたろう / Kentaro Sato

1970年生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職、東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教等を経て、サイエンスライター。2010年、『医薬品クライシス』(新潮新書)で科学ジャーナリスト賞、2011年、化学コミュニケーション賞を受賞。著書に、『健康になれない健康商品 なぜニセ情報はなくならないのか』(春秋社)、『医薬品とノーベル賞 がん治療薬は受賞できるのか? 』(角川新書)、『炭素文明論』(新潮選書)、『「ゼロリスク社会」の罠』(光文社新書)、『世界史を変えた薬』(講談社現代新書)ほか多数。国道マニアとしても知られ、『ふしぎな国道』(講談社現代新書)、『国道者』(新潮社)の著作もある。

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