ただしこれらの違いは、一度に並べて食べ比べないとよくわからないだろう。できれば何が普通の国産若どりと違うのかをはっきり明記してほしいと思うが、パッケージに表示できる情報には限界があるし、コスト的にも難しいのだろうなとあきらめている。ただし、中には「地鶏よりリーズナブルでうまい!」というものもあるので、国産若どりに飽きがきたら試してみてほしい。
なお、ごくまれな話であろうが、生産者の中には国産若どりのオーダーが予想より多くなったとき、銘柄鶏を若どりとして出荷せざるをえないこともあるという。生産者にとっては、生産コストが余計にかかっているのに国産若どりとして売らねばならず損をするが、消費者は知らないうちに得をしているかもしれない。
味わいの王者は「地鶏肉」
最後は、高くて手が伸びにくい地鶏について。
「地鶏って、その辺で放し飼いにしている鶏のことでしょ?」と簡単に考える人もいるようだが、現在は地鶏の定義(地鶏肉の日本農林規格)がある。簡単に説明すると、第1に軍鶏(しゃも)や薩摩鶏など、明治までに日本に存在したことが確認されている在来種の血を最低50%は引いていること。第2に、出荷までに75日以上飼育していること。第3にケージ(檻)で囲うのではなく平飼いしていること、その飼育密度が1平方メートル当たり10羽以下であること。これらの条件には明確に、味につながる意味がある。
たとえば飼育期間。安価な国産若どりは47日程度で出荷するが、地鶏は75日以上育てることとなっている。実は鶏肉のうま味を高めようと思うと、少なくとも80日以上は育てる必要があるといわれる。それどころか、味の面で評価される地鶏の多くは、120日以上、中には200日以上も育てて出荷しているところが多い。ケージ飼いにせず広い場所で平飼いにするのは、運動できるようにして引き締まった肉質、ストレスのない健全な育て方をすることにつながる。
しかし、地鶏肉の高い基準を守ると、価格はどうしても高くなってしまう。在来種は肉用に品種改良をされていないので、成鶏でも体が小さく、成長スピードも遅いものが多い。ブロイラーの倍に当たる100日以上育てても、肉がブロイラーの3分の1程度しかとれない地鶏品種もある。なんとか大きくしようと長く飼えば飼うほど餌代がかかるし、飼うための面積も必要だ。だから、店頭で国産若どりと比べると3~4倍の価格差があるのは仕方のないことなのだ。
生産者がそれだけ頑張って育てた地鶏肉であっても、消費者にとっての問題は価格差に見合う味の違いを感じるかどうかだ。基本的に地鶏肉は国産若どりに比べ飼育日数が長いので、食感が明らかに強く、味や香りも濃いものだ。試しに国産若どりと地鶏の同じ部位の肉を買い、ホットプレートなどで焼いて塩だけで食べてみてほしい。違いは一目瞭然、地鶏は肉が引き締まり適度なかみごたえがあり、何よりうま味が強く、塩だけでも十分に食べられるはずだ。
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