バター不足で利益を貪る団体など存在しない 輸入バターを保管する経費は莫大だ

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生乳は余剰が出ないよう計画的に生産されているため、需給バランスが狂うとバター不足の事態に陥ってしまう(*hanabiyori* / PIXTA)

前回の記事(バター不足の原因は、「農協の陰謀」ではない)で、バター不足が引き起こされる背景には特に陰謀めいたものがあるわけではないと書いた。生乳は業界全体で計画的に生産されており、どちらかといえば足りなくなることよりも余剰が出ないことを優先しているため、何らかの要因で少しでも需給バランスが狂うと不足になってしまう。その際に生乳を割り当てる優先順位の低いバターが犠牲になり、不足してしまうということを説明した。

記事に対したくさんのコメントをいただいたが、その中で「バターの冷凍保存が効くなら、生乳が余ったときにバターを作り、保存すればいいではないか」という趣旨のものがあった。実は現状ですでにそうしているのだ。乳製品のマーケットは1年を通じて一様に消費されるわけではない。夏場の暑い盛りは冷たい牛乳の消費が伸びる。逆に冬場は牛乳の消費が落ちる。けれども前回書いたように、牛はいきなりお乳を出す量を減らしてくれるわけではないので、それに合わせて半年単位で乳牛の数を増減することは不可能だ。そこで、飲用牛乳の消費が落ちてきたら、バターや脱脂粉乳を作る量を増やす。つまりバターは需給バランスの調整弁となっている。だからこそ、ちょっとでもバランスが崩れると不足になってしまうのである。

「インサイダー」と「アウトサイダー」の違い

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11月22日放送「ガイアの夜明け」の酪農に関する回で、北海道の指定団体であるホクレンがやり玉に挙がったことに関しても補記しておきたい。北海道と他の都府県とは酪農を巡る状況がまったく違っており、生産力の大きな北海道に対して、都府県の生産量は少ない。規模の大きいバター工場は北海道に集中しているが、これは北海道がバターや脱脂粉乳用の生乳出荷を「引き受けている」からだ。都府県では、生産される生乳はほとんどが飲用牛乳に回す分で手いっぱい、若干余った場合は調整弁としてバターなどにする。それに対して、北海道では生産量が多いため、最初から計画的にチーズやバター、脱脂粉乳の国内使用量を確保すると決めて製造をしている。ただし、飲用に回すよりも加工品の場合は買取額が低くなってしまうので、酪農家は嫌がる。だから差額を補填する補給金を支払うのである。

これでうまくいけばいいのだが、何かアクシデントで生乳が足りなくなったりしたときには、飲用に使う生乳の価格にプレミアムが付加され、加工向けの価格に補給金を足した額よりも、大幅に上回る(ちなみに、今でも飲用向け価格は補給金を乗せた加工向け価格よりも30円ほど高い)。だから、酪農家の中には「自由に飲用に売れたらいいのになあ」と思う人がつねに存在する。そういう人が指定団体の系統から離脱して独立系の業者に販売すると「アウトサイダー」と呼ばれる。対して、指定団体を通じた流通をする人たちは「インサイダー」だ。インサイダーは、飲用市場向けに自由に販売するという道をあきらめる代わりに、計画生産を果たすことで補給金を手にできる。つまりインサイダーはローリスクローリターン、アウトサイダーはハイリスクハイリターン経営であるということだ。

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