バター不足で利益を貪る団体など存在しない 輸入バターを保管する経費は莫大だ

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しかも、実はこの300億円程度必要な生産者補給金のうち国庫(税金分)から満額交付されている訳ではない。というのは、バターが足りなくなると、海外から追加輸入をするというのは前回も書いたが、その際に発生する売買利益が、補給金に充てられることがあるからだ。これについても大きな誤解をしている人が多い。

バター輸入で利権を貪る団体とは?

たとえばビジネスジャーナルのこの記事(誰がバター不足&高騰を「つくって」いるのか?緊急輸入で行政法人が巨額利益)では、バター輸入の実務を行う独立行政法人農畜産業振興機構(alic)がやり玉に挙がっている。

海外からバターを輸入しようとすると、輸入時に高率の関税がかかり、たとえば、alicがバターを輸入する場合は、関税35%を除く内外価格差分はalicの利益となる。それを「輸入利権を貪る農畜産業振興機構」と小見出しに書いている。

そして、記事の結びでは指定団体制度を廃止して、輸入を独占するalicを解体すれば、自由競争原理が働くのでバター不足は解決するとしている。ことバター不足問題に関して「だけ」考えるならそうかもしれない。しかしその際には、この国で安定的に牛乳・乳製品が供給されてきた仕組み全体が破壊され、牛乳が市場から姿を消したり、国産のバターが生産されなくなったりするかもしれないのだが、それについては触れられていないことに違和感を覚える。

それに、alicという組織は実際に巨額の利権を貪っているのだろうか? そしてその「貪られた」利権はどんな闇に消えているのだろうか? 実は、これを明らかにするために筆者はalicにインタビューを申し込んだ。規制改革推進会議の提起した指定団体制度問題が盛り上がっていた時期だったからか、慎重な対応だったものの、畜産関連事業の需給にかかわる畜産需給部の部長と話をすることができた。

――バターに高率の関税をかけることで、alicは巨額の利益を得ている、という表現をされていますが、実際にはどんな事業をしているのでしょう?

「当機構は、畜産物や野菜、砂糖、でん粉といった国民の生活に密接にかかわる食料を安定供給するために、生産者に対して経営安定のための直接的な支払いをしたり、農畜産業を振興するための助成を行ったりする独立行政法人です。酪農家に補給金を交付したり、バターを含む指定乳製品などの輸入売買業務を当機構が行っています。

当機構が高額の利益を上げているということですが、独立行政法人は厳しく外部から監査され、業務内容や決算については情報公開の責任がありますので、事業報告書としてすべてを公開しています(参考:平成27年度事業報告書)

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