さらに、米国の政策転換は世界経済にとって大きなリスクになる。小池百合子東京都知事が、トランプ政権の誕生で法人税率が大きく下がる可能性について言及していたが、トランプ大統領は選挙期間中、法人税率を現在の40%から15%に引き下げると言明している。
実際に、現在の米国の「法人実効税率」は40.75%(2016年4月、財務省)。予算の編成に対して大きな権限を持っている議会が、そのまま減税案を通すとも思えない。
オバマ政権でも法人税率を28%に引き下げようとしたものの、議会の抵抗にあって実現できなかった。とはいえ、仮に15%にまで引き下げられるようなことになれば、米国に生産拠点がある企業は、本社機能を米国に移すかもしれない。いうまでもなく、そのほうがメリットは大きいからだ。
補う財源はどうするのか
減税すれば当然ながらそれを補う財源はどうするのか、という議論があるはずだが、トランプ政権には通用しない。景気が良くなって税収がアップするからそれで賄う、といった不透明極まりない理由をつけて法案を通してしまう可能性が高い。
ちなみに、最近になってEU(欧州共同体)の単一市場には残留しないという「ハードブレグジット」を表明した英国でも、企業のEUや第三国への流出を防ぐために、現在の20%(同)の法人税率を、さらに引き下げるのではないかと危惧されている。
米国、英国共に、法人税率を10%台にまで引き下げれば、世界のおカネの流れは大きく変化するに違いない。
今われわれは、まさに「不確実性の時代」を生きている。そして、これからその不確実性はさらに増し、世界経済は大きく揺らいでいくことだろう。その震源地となるのが、トランプの米国だ。
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