トランプの第一主義に見える大衆迎合の限界 予測困難な経済政策で世界の不確実性は増す

✎ 1〜 ✎ 65 ✎ 66 ✎ 67 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さらに、米国の政策転換は世界経済にとって大きなリスクになる。小池百合子東京都知事が、トランプ政権の誕生で法人税率が大きく下がる可能性について言及していたが、トランプ大統領は選挙期間中、法人税率を現在の40%から15%に引き下げると言明している。

実際に、現在の米国の「法人実効税率」は40.75%(2016年4月、財務省)。予算の編成に対して大きな権限を持っている議会が、そのまま減税案を通すとも思えない。

オバマ政権でも法人税率を28%に引き下げようとしたものの、議会の抵抗にあって実現できなかった。とはいえ、仮に15%にまで引き下げられるようなことになれば、米国に生産拠点がある企業は、本社機能を米国に移すかもしれない。いうまでもなく、そのほうがメリットは大きいからだ。

補う財源はどうするのか

『トランプ政権でこうなる! 日本経済』(あさ出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

減税すれば当然ながらそれを補う財源はどうするのか、という議論があるはずだが、トランプ政権には通用しない。景気が良くなって税収がアップするからそれで賄う、といった不透明極まりない理由をつけて法案を通してしまう可能性が高い。

ちなみに、最近になってEU(欧州共同体)の単一市場には残留しないという「ハードブレグジット」を表明した英国でも、企業のEUや第三国への流出を防ぐために、現在の20%(同)の法人税率を、さらに引き下げるのではないかと危惧されている。

米国、英国共に、法人税率を10%台にまで引き下げれば、世界のおカネの流れは大きく変化するに違いない。

今われわれは、まさに「不確実性の時代」を生きている。そして、これからその不確実性はさらに増し、世界経済は大きく揺らいでいくことだろう。その震源地となるのが、トランプの米国だ。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事