日本はTPP交渉に米国を引き込む代償として、2013年4月に成立した「日米合意」の中に「日米並行協議」と呼ばれる条項を盛り込んでいる。この条項は文字どおり、TPP交渉と同時並行して「保険や公共事業の市場開放」や「食品添加物の安全基準」「製品の表示義務」「サービス、貿易などの非関税障壁の撤廃」など多岐にわたる分野について交渉するものだった。
これが今後行われるであろう、日米2国間のFTA交渉に持ち込まれ、日本は最終的に韓国が米国と締結している「米韓FTA」のような不利な内容の協定を迫られる可能性が大きい。
もっとも、現段階ではその交渉の窓口がどこになるのかさえもよくわかっていない。商務省トップのウィルバー・ロス商務長官なのか。それとも米通商代表部(USTR)のロバート・ライハイザー代表なのか。あるいはトランプ政権が新たにつくった「国家通商会議」になるのか――。
ただ、新設された国家通商会議は、トップに対中強硬派のピーター・ナバロ米カリフォルニア大教授が指名されており、中でも注目すべきは「国家安全保障会議」と組んで国防と通商政策をリンクさせた外交戦略を立案する点だ。
同会議が中国と同様に日本との交渉も担い、日米安保条約の見直しとリンクさせてくる可能性もあるかもしれない。安倍政権の頑張り次第ではあるが、ここ数年は日本にとって正念場となりそうだ。
米英両国がタックスヘイブンの地となる?
このような直接的な日本経済への影響以外にも、米国景気が良くなったり、悪くなったりすることで日本経済や世界経済全体への影響も心配しなければならないだろう。
金融マーケットは、トランプ政権のインフラ投資や減税などの景気刺激策によって、当面は景気が良くなるとみて、米国の株高、ドル高を予測している。
しかし、リーマンショック以後、一貫して景気を拡大し続けてきた米国経済は、景気循環などの観点からすれば、そろそろリセッション(景気後退期)に入ってもおかしくない。米国の株式市場が、かつての大恐慌やブラックマンデー、リーマンショック級の大暴落が起きてもおかしくはない状況であることは認識しておいたほうがいいだろう。
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