「モバイルバッテリー」は、これから不足する 「アンカー」が直面する危機とは?
外資系の大手証券会社のキャリアから、自分の手でもの作りに携わりたいと、30歳を期に転身したアンカージャパンの井戸氏。アンカーは、2016年には家電ブランド「eufy」(ユーフィー)を立ち上げるなど、スマートフォンの周辺機器からブランドを飛躍させている。中でも日本は、成長率が非常に高い重要な市場だ。
「これまで、コネクテッド(インターネット接続可能な機器)ではないものを作り続けてきたメーカーです。今後の成長分野であるコネクテッド分野への参入を、昨年、果たしました。掃除機やアロマデフューザーなどをラインナップしながら、価格競争力と、便利さ、たとえばAmazon Echo(エコー)の人工知能Alexa(アレクサ)と連携するなどのスマートさを、身近に広めていきたい」(井戸氏)
アンカーは2009年、グーグルの検索エンジニアのスティーブン・ヤン氏(現アンカーCEO)らが立ち上げたスマホ周辺機器のメーカーで、本社はシリコンバレーのサンタクララやシアトルに拠点を有する。しかし開発の本拠地は中国の深センだ。
最近、組織構造の変革を行ったと語る井戸氏。250人の製品開発者は、製品カテゴリーごとに配置され、企画、研究開発、マーケティングの担当が属しているという。
たとえば今回のように、新たに家電ラインを立ち上げる場合、メンバーを社内外から集め、素早く組織化する。社内で新しいユニット(班)への異動を募ったり、グローバルの著名ブランドからデザイナーやプロダクトマネジャーを引き抜くこともある。
もしその製品ラインがうまくいかなくなったら、解散してほかのユニットが人材を吸収する。こうしたフレキシビリティ(柔軟さ)が、企業の新陳代謝と働く楽しさを作り出しているそうだ。
「ただし、組織についても試行錯誤を繰り返しています。チームを重視する体制に移行する以前は、マトリクス的に、製品を横断して担当の仕事をする、という体制を敷いていました。創業当初はグーグルの組織体制を参考にしてきましたが、中国のグローバル企業研究をしながら、その土地に合わせた変革を繰り返しているのです」(井戸氏)
2016年はポケモンGO需要が爆発
日本では4期目となるアンカー。基本的に販社という位置づけだが、日本発のプロジェクトもいくつか進行中だという。2016年、世界成長は150%だったが、日本は200%と、グローバルの中でも飛び抜けて高い成長率を示している。
「2016年は、なんといってもポケモンGOの影響が大きかったです。アプリがアナウンスされたタイミングで、すでに販売がケタ違いになり、リリースされた日の午後には、バッテリーの売り上げが5倍になりました。あらゆる在庫がゼロになり、大変なおしかりを受けました」(井戸氏)
グローバルの中でも、日本が最も鋭くポケモンGOに反応したという。ゲームを楽しみたい。しかしスマートフォンのバッテリーが生命線であるという現実もある。「ポケモンGOを楽しむならバッテリーが必要という理解が、最も進んでいたのではないか」と語る。
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