「モバイルバッテリー」は、これから不足する

「アンカー」が直面する危機とは?

「今後、ポケモンGOに限らず、位置情報ゲームや高度なグラフィックス、あるいは拡張現実、仮想現実といったゲームが定着すれば、モバイルバッテリーのニーズはさらに高まっていくと予測しています。その反応が最初に表れるのは、今後も日本市場だとみています」(井戸氏)

アンカーは、深センに本拠地を置いていることからもわかるとおり、自社工場を持たない企業だ。それゆえに見えてくる市場環境の変化もあるという。

「世界の工場と言われる深センであっても、あらゆるリソースには限りがあります。たとえば、工場の働き手の増減や、春節以降の戻りのタイミングといった労働力の問題には、敏感に反応しなければなりません。

加えて、同業や別の産業との労働力やパーツの取り合いが展開されていることも、われわれのビジネスに大きく影響があり、また、そこにかかわっているからこそ予測できる近未来があります」(井戸氏)

バッテリーをかき集めても足りない時代に

そうした中で、2016年から2017年への変化は、危機的な状況にあるという。その理由は、バッテリーの確保が難しくなったことだ。その背景には、ある自動車メーカーの存在がある。

「モバイルバッテリー企業が軒並み苦しんでいるのは、パナソニック製のシリンダー型リチウムイオン電池の確保が難しくなったからです。日本メーカーということで信頼性や小型軽量性で人気のある電池“18650セル”ですが、電気自動車向けの需要が急激に高まっていることから、手に入らなくなってきました」(井戸氏)

シリンダー型リチウムイオン電池を大量に必要とする自動車メーカーとは、テスラのことだ。テスラはパナソニックと合弁で、米国ネバダ州リノに「ギガファクトリー」と呼ばれる電池製造工場を稼働させた。

しかしこの稼働は、前述の18650セルの確保の改善にはつながらない。ギガファクトリーで製造されるのは「2170セル」と呼ばれる一回り大きな電池で、家庭用の蓄電池「パワーウォール」や、2017年に納車が始まる小型セダン「モデル3」向けに使われるという。既存車種では、これまでどおり18650セルを使い続けるのだ。

「世界的に、高性能なリチウムイオンバッテリーの供給が逼迫している状況です。アンカーでもLG製に切り替えるなど設計の変更をしています。GALAXY Note 7の発火事故もあり、同じ韓国製ということで不安がるお客さまもいらっしゃいますが、実質的に、サプライヤーはLGしかないのが現状です」(井戸氏)

ソニーはバッテリー部門を村田製作所に175億円で譲渡した。2017年4月にこの取引が完了し、新たな高性能バッテリーセルのサプライヤーとして期待も集まっているが、次世代製品が供給され始めるのにはまだしばらくかかる、と井戸氏はみている。

しかし、バッテリーのビジネスは、今後もわれわれの生活に密接に関係する、未来が開けたカテゴリーだ。

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