IT企業が「自動車」へと目を向ける必然理由 「CES」で見えた最新技術トレンド

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「CES」で行った記者会見に登壇したソニーCEOの平井一夫氏(写真:筆者撮影)

テクノロジー製品メーカーを集めた世界最大の展示会「CES 2017」が1月5~8日に米ラスベガスで開催された。CESを主催してきたCEA(全米家電協会)は昨年1月、CTA(全米民生技術協会)へと名称を変更。“電気の力で家庭用品に変革をもたらす”展示会から、“技術を駆使して社会を変革する”展示会への転換を宣言していたが、その方針転換が色濃く反映されたのが今回のCESだったと言えるだろう。

トヨタやホンダがコンセプトカーを展示

トヨタの「Concept-愛i(コンセプト・アイ)」(写真:筆者撮影)

ここ数年、CESは自動車向け電装技術を発表する場となっており、会期が重なる自動車業界の展示会「デトロイトショー」とは異なる視点で、車メーカーが技術やコンセプトを展示してきた。昨年、水素社会の到来を訴求して自社が有する特許の公開を発表したトヨタは今年、AI(人工知能)を漢字の「愛」と読み替え、“人が心地よく過ごせる”車内環境や自動運転の技術コンセプトカー「Concept-愛i(コンセプト・アイ)」を展示した。

Concept-愛iはドライバーの感情や嗜好を、車内の各種センサーだけでなくSNS発信などネット上の活動から読み取り、自動運転技術と組み合わせることで安全運転へとつなげる。未来的な発想ではあるが、数年後をめどに一部技術を搭載して日本国内での公道実証実験を行う予定とのことだ。

CESに初めてブースを持ったホンダは、二足歩行ロボット「ASIMO」で培った技術を用いた「UNI-CAB(ユニカブ)」の発展モデル、さらに二輪車に応用した実験車両「Honda Riding Assist」を披露して驚かせた。いずれも自立かつ自律的走行が可能で、車両を手元に呼び出したり、車両を降りたオーナーが歩く後ろを自動追従する機能などを備える。

“バランスドモビリティ”と呼ばれる分野はセグウェイが開拓した分野だが、四輪車と比較して狭い場所でも移動でき、駐車場所などにも困らない。自動運転と組み合わせた場合、“呼び出し”といったことも比較的容易だ。Honda Riding Assistはライダーの負担軽減が主要な機能だが、将来的な発展余地は大きい。

ホンダのコンセプトカー「Honda NeuV(ニューヴィー)」(写真:筆者撮影)

さらにホンダは自動運転時代のコンセプトカーとして「Honda NeuV(ニューヴィー)」も展示した。搭載される独自開発のAI「感情エンジン HANA(Honda Automated Network Assistant)」は、ドライバーの健康状態や感情をカメラでとらえる表情や音声、運転状況などから感じ取り、事故発生を未然に防ぐようアドバイスやアシストを行うほか、使用していないときには所有者の許可を得たうえで他者が呼び出してカーシェアリングを行うといった、自動運転時代の新たな利用提案も盛り込まれていた。

次ページより“CESらしさ”を感じさせたこととは?
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